土木学会は、4月から適用される時間外労働の罰則付き上限規制に対応し、魅力ある建設産業となるための提言を作成、公表した。個々の建設企業に加え、発注者や設計者とも連携し「建設産業に関わる全ての者を挙げて取り組む必要がある」ことを指摘。短期・中期・長期に分け、働き方の見直しや新技術導入、人材の裾野の拡大を呼び掛ける内容となっている。
短期の取り組みとしては、賃金の引き上げや適正工期の確保といった労働環境の改善を継続するとともに、他産業も参考にしながら効果的な事例を水平展開するよう求めた。特に時間外労働の大きな原因である書類作成時間の削減に向け、公共工事での検査書類の削減や、事務業務を担う建設ディレクターのような職域の活用を提案。その上で、発注者と設計者、施工者の連携による建設プロセスの効率化が必要だとした。
中期の取り組みには、生産性向上に向けた新技術活用を盛った。特に中小建設業の働き方改革の必要性を指摘。発注者に対し、コスト以外の要素を考慮した積算価格の設定や、技術開発を促進する調達制度の整備を求めた。さらに、建設生産システム全体を3次元データで連携させる体制の構築が必要だとした。
長期的には、建設産業の成長に向けて国内インフラ市場の維持・拡大と新たな市場創造の両面を提言。地域建設業の維持へ官学民が連携する「建設産業地域エコシステム」(仮称)の構築も提唱している。さらに、国土強靱(きょうじん)化中期実施計画をはじめ、インフラ整備と管理に関わる中長期計画の策定を求めた。
一連の取り組みの具体化へ、土木学会として「働き方」を建設マネジメントの対象に据えた研究を深めていくことも盛った。
提供:建通新聞社