国土交通省の調査によると、2018〜22年度の5年間に、国内で街路樹の倒木が2万6000本超(年平均約5000本)発生していた。倒木による被害は、国の管理道路で人身1件、物損34件が確認された。各道路管理者が点検に基づく事前伐採などで対応しているが、人手不足が進行する中で倒木被害防止の取り組みを続けていくためには、「より効率的・効果的な街路樹の管理・診断が必要で、新技術の開発支援や活用方法の検討が求められる」(国交省担当者)。
国交省は、台風や地震、積雪で倒木による被害が多数発生している現状を踏まえ、本年度に全国の街路樹を対象とした倒木調査を初めて実施した。
対象は、国・都道府県・自治体が管理する道路で、街路樹として植えられている高木約720万本。このうち22年度以前の5年間で発生した倒木本数を調べたところ、18年が1万4320本と突出し、以降、19年度が4584本、20年度が2065本、21年度が2350本、22年度が2754本と推移していた。5年累計では2万6073本、年平均5215本となった。
このうち台風などの影響で倒れた街路樹が、18年度に1万2069本、19年度に3604本、20年度に2065本、21年度に2350本、22年度に2754本と多数を占めた。
特に、18年度は近畿地方を中心に各地に大きな被害をもたらした台風21号や、北海道胆振東部地震など大規模な自然災害が発生しており、18年度に突出した倒木の発生要因を裏付ける結果となった。地域別での倒木数をみても、台風が接近しやすい沖縄などで多く発生していた。
街路樹は、都市環境全体の質を向上させる重要な手段であり、さまざまな整備効果をもたらす。例えば、樹木の葉が日差しを遮ることで夏の高温を和らげる。都市景観が向上することでの心理的なリフレッシュ効果により、歩行者や自動車運転手のストレスを軽減するといわれる。
一方、倒れた街路樹が道路をふさいだり、電線を切断したりすると、国民の生活に重大な支障を来しかねない。
岩手県では、雪の重みで倒れる危険性が高い街路樹について、23年11月に事前伐採を実施した。県の担当者は「事前伐採した道路は、通行止めがあってはならない重要路線。安全通行のために全力を挙げたい」とした。
道路管理者には、事前伐採などの対応を万全に行うとともに、人手不足に対応した管理体制の構築や新技術の開発支援も求めたい。
提供:建通新聞社