斉藤鉄夫国土交通相は、建設専門紙の共同インタビューに応じ、「社会資本整備は未来への投資である。中長期的な見通しの下、戦略的・計画的に整備を進める」などと、2024年の抱負を語った。4月からの水道行政の移管に向けては、上下水道一体の組織体制を整えるなど、「水道行政の機能強化へ万全を期す」と決意を示した。
―防災・減災、国土強靱(きょうじん)化や、老朽化するインフラ対策をどのように進めるか。
「強靱化の取り組みは、23年6月に国土強靱化実施中期計画が法定化されたことにより、5か年加速化対策後も切れ目なく進めることが可能となった。引き続き必要かつ十分な予算の確保に努める。社会資本整備は未来への投資である。建設業者が安心して設備投資や人材育成を行えるよう、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進し、戦略的・計画的に進める」
「インフラ老朽化への対応では、広域・複数・多分野のインフラを『群』として捉えて戦略的にマネジメントを行う地域インフラ群再生戦略マネジメント、いわゆる群マネ≠推進する。『予防保全型』のインフラメンテナンスへの本格転換を図るため、モデル地域での取り組みを進め、その知見を全国へ展開する」
―建設産業の働き方改革と担い手確保・育成への対応はどうか。
「4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される。持続する建設業を目指し、的確に対応し、一層の働き方改革を推進しなければならない。工期の適正化をさらに進め、週休2日の確保や残業縮減を実現する」
「また、担い手の確保へ技能者の経験と能力に応じた処遇の実現を目指す『建設キャリアアップシステム(CCUS)』を引き続き推進する。同時に、技能者に賃金を支払う専門工事業者にまで、賃上げの原資となる労務費が適切に支払われるよう、必要な制度改正に取り組んでいく」
―資材価格の高騰を踏まえた適切な価格転嫁対策をどう考えるか。
「現下のような資材価格の高騰を踏まえれば、必要な事業量を確保するとともに、事業の執行段階においても、市場実勢を反映した予定価格の設定や、資材価格高騰を踏まえた契約変更を適切に実施する必要がある」
「このため、国交省の直轄工事では、最新単価の予定価格への反映、適正な工期の設定、契約後の状況に応じた契約変更(スライド条項の適切な運用など)に取り組む。地方公共団体への働き掛けも続ける」
―建設業のDX・GX推進も重要な課題になる。
「DXでは、23年8月に『インフラ分野のDXアクションプラン第2版』を策定し、活用中のデジタル技術をインフラ分野ごとに分類したインフラDXマップをとりまとめた。各分野でのデジタル技術のさらなる活用を図っていく。具体的には、建設施工における自動化・遠隔化の普及促進、建築BIMによる建築確認の実現に向けた環境整備などに取り組む」
「GXでは、建設分野の脱炭素化に向けて、CO2削減につながる材料・建機の導入を進める必要がある。直轄工事では建設材料の現場試行などを推進する。道路照明灯のLED化による省エネ化、ハイブリッドダムによる水力発電の強化といった対策も進める」
―水道行政の移管へどう備えるか。
「上下水道一体の組織体制を整備する。本省に局長級の上下水道審議官を配置するとともに、事業主体である自治体の支援窓口となる地方整備局に水道担当の組織を新設する。水道行政と下水道行政を併せて所掌することにより、水ビジネスの国際展開や、官民連携、技術開発などの共通の課題に対し、一体的かつ効率的に取り組んでいく。環境省とも緊密に連携し、水道行政の一層の機能強化が図られるよう、万全を期す」
提供:建通新聞社