国土交通省は12月1日、適正な下請け契約と代金支払いを建設業界に求める、盆暮れ通達≠建設業団体、公共発注者、民間発注者に送付した。今回の通達では、2024年4月から始まる建設業での残業時間の上限規制を見据え、週休2日の定着や適正な工期設定、働き改革の推進に関わる留意事項についての周知を手厚くした。また、夏場に工事現場で死傷災害が相次いだことを踏まえ、労働災害防止の取り組みを徹底するよう強く求めた。
残業時間の上限規制へは、受発注者双方が時間外労働の上限規制を順守できることを前提とした工期設定に努めることとした。前工程が遅延した場合には、後工程にしわ寄せが及ばないよう工期を延長する一方、完成日優先で工程を短縮せざるを得ない場合は、元下間で協議・合意の上、突貫工事に必要な掛かり増し費用など、適切な契約変更を行うよう求めた。さらに、受注者は、後工程へのしわ寄せが生じないような工程管理に努めることともした。
週休2日の定着では、1カ月の所定労働時間に対して賃金額を決める、いわゆる「月給制」により賃金を毎月安定的に支払うなど、定着へのインセンティブが働く方策を導入することも考えられるとした。
この他、資材高騰への対応でも留意事項を明記。価格の高騰が続いている現状を踏まえ、引き続き、元下間または下下間の契約で、スライド条項など、工期内の賃金または物価の変動に適切に対応するよう要請。請負金額や工期に変更が生じる場合、元下双方で協議し、着工前の書面による見積もり依頼や変更契約を徹底することを求めた。
公正取引委員会では、「価格交渉のための協議の場を設けることなく、価格を据え置く」「価格転嫁しない理由を書面などで回答することなく価格を据え置く」といった行為について、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあるとしている。こうした優越的地位の濫用に該当する恐れがある行為に留意するようにも求めた。
インボイス制度が今年10月に施行されたことを踏まえ、関係省庁とまとめた「インボイス制度施行に関するQ&A」を参考にするよう周知。元請けと、免税事業者となる下請けとの対等な関係構築、公正で透明な取引の実現を目指すよう改めて促した。
工事現場の死傷事故では、公共工事で橋桁、民間工事で鉄骨が落下し、作業員が亡くなった。適切な施工は建設企業の基本的な責務であり、その徹底を改めて周知した。
盆暮れ通達は、資金需要が増す夏季・冬季の年2回、不動産・建設経済局長名で送付。元請けなどに、経営基盤の弱い下請け企業に対する適正な支払いを求める。
提供:建通新聞社