国土交通省は、請負契約での労務費の相場観を示す「標準労務費」を設定するため、算定に必要な歩掛の調査・分析に着手する。標準労務費は、「1人当たりの労務費(公共工事設計労務単価)」に、「人工(歩掛)」を掛け合わせて求めることとしている。このため調査・分析では、工種の規格ごとに存在する歩掛を全て洗い出す。2023年度補正予算案で調査・分析業務の委託費など3億2000万円を計上。本年度中に業務を外注する。
標準労務費は、1d・1平方bなど単位施工量当たりの標準的な労務費とし、工種ごとに設計労務単価と歩掛を掛け合わせて算定する。ただ、対象となる工種は1000種類以上に及び、歩掛は各工種に複数ある規格ごとに存在する。その数は膨大な数であり、全ての規格に対応した標準労務費を設定するのは現実的ではない。そこで国交省は、標準的な規格の歩掛を定め、それをもって該当工種の標準労務費とする方向で検討する。
調査・分析業務では、過去に国交省が発注した直轄工事約3万件を対象に、規格ごとの歩掛の使用頻度などを調べる。工種と歩掛との相関も分析し、全ての歩掛を整理する。その上で、複数の規格を一つにする形で標準規格を検討していく。
国交省は今後、調査・分析業務と並行して、有識者を交えたワーキンググループ(WG)を設置する。そこで▽複数の規格をどのように標準的な規格にまとめるか▽標準労務費に幅を持たせるか▽歩掛が存在しない工種については標準労務費の算出方法をどうするか―といった課題を整理。具体化への検討を進める。調査・分析結果はWGでの検討の基礎資料とする。
標準労務費は、持続可能な建設業の実現に向けて取り組むべき施策の一つとして、中央建設業審議会(中建審)基本問題小委員会が提言した、中建審が作成・勧告することで、労務費を原資とする廉売行為を制限し、公正な競争の促進、技能者への賃金の行き渡りにつなげる狙いがある。設定後は、設計労務単価や直轄工事の歩掛などの改正に合わせて順次、見直す方向性も示している。
提言では、「請負契約の透明化による適切なリスク分担」「適切な労務費などの確保や賃金行き渡りの担保」「魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上」の三つの観点から取り組むべき施策を提示。標準労務費は「適切な労務費などの確保や賃金行き渡りの担保」に基づく取り組みとなる。
提供:建通新聞社