国土交通省は、特別緑地保全地区(特緑)の活用推進に向けて、自治体に代わり、国が指定する都市緑地法人で緑地を買い入れ、機能増進事業を行うことができる新たなスキームを構築する。今後、必要な法制度ついて検討し、2024年度の制度創設を目指す。
特緑は、都市緑地法に基づき、都道府県または市町村が、都市近郊で良好な自然的環境を形成している緑地を指定するもの。緑地の所有者は税金の優遇を受けることができる一方、建築物など開発行為が規制される。所有者から申し出があった場合、自治体は緑地を買い入れなければならない。2021年度末時点で累計637地区約2910f(19都道府県84都市)が指定済みとなっている。
ただ、予算不足などから買い入れが困難になっている自治体もある。適切な維持管理に手が回らず、樹木の大径木化や低木が繁茂するなど、荒廃が進んでいる緑地も少なくない。里山管理が適切に行われず、大径木化が進行し、近年は台風による倒木・ナラ枯れによる被害も頻発しているという。
そこで、国交省は国土交通大臣の指定を受けた都市緑地法人(国指定法人)が自治体に代わって所有者から緑地を買い入れ、適切に維持管理を行うスキームを考案=図。都市緑地法人は既存の公益団体を想定する。指定法人が買い入れた緑地を一時的に保有し、緑地の機能増進事業に取り組むこととする。自治体は長期月賦で当該緑地を取得できるようにする。経済界などから寄付も募る。
機能増進事業は、防災や生物多様性の保全機能の向上のために樹木の面的な皆伐・択伐を行い、伐採木からの萌芽により、樹木の更新を進める取り組み。緑地が整えば住民団体などの立ち入りが可能になり、下草刈りといった管理活動が円滑に行えるようにもなる。住民からの苦情の減少、管理費の縮減、コミュニティ活動の活発化といった効果が期待される。
国交省では24年度概算要求で関連事業費として26億8000万円を盛り込んでおり、▽気候変動への対応▽生物多様性の確保▽Well―Beingの向上―の実現へ、都市近郊緑地の保全・機能発揮のための取り組みを後押しする。
提供:建通新聞社