建設経済研究所は、2023年度の建設投資について、名目ベースで前年度比3・9%増の71兆4800億円になるとの見通しをまとめた。一方で、資材価格や労務費の上昇分を除いた実質ベースは2・0%増の58兆5003億円と推計。名目と実質のかい離額は12兆9797億円で、22年度よりも拡大した。ただ、価格転嫁の進展もあって、前年度と比べた伸び率は縮小傾向にある。
23年度の建設投資は、政府(公共)、民間ともに堅調に推移していくと予測する。公共投資は、建築補修分を含め5・5%増の25兆5800億円と推測。国・地方いずれも予算は前年度と同水準となるが、足元の出来高が前年度比で増加している現状を踏まえ、名目・実質ともに増加するとした。公共の建築補修は、13・7%増の2兆1600億円を見込んだ。
民間投資は、住宅、非住宅分野ともに微増と推計。住宅分野は2・1%増の17兆2700億円の投資を見込む。着工戸数が減少するものの、省エネルギー化など住宅の高付加価値化や建設コストの上昇で、名目・実質ともに前年度より伸びるとした。
非住宅分野は、土木工事を含め、2・5%増の19兆1500億円と予測。企業の設備投資意欲が堅調だが、足元の着工床面積が減少しているなど、建設工事に対する投資に慎重な姿勢がうかがえるとした。名目で前年度比微増、実質で同水準となる。
用途別で見ると、事務所は、23年度の着工床面積が過去5年程度で最低水準にあり、前年度比で減少を見込んだ。店舗、工場、倉庫・物流施設も減少するとした。
民間の土木投資は、鉄道工事などの受注が堅調に推移しており、実質で前年度と同水準の投資を見込む。
24年度の建設投資については、公共・民間で1・1%増の72兆2400億円と予測。前年度より伸び率が縮小するものの、全体的に堅調な投資が続くとした。
名目と実質のかい離額は、21年度が7億8597億円(前年度比60・5%増)、22年度が11兆4197億円(45・3%増)、23年度が12兆9797億円(13・7%増)、24年度が13兆2360億円(2・0%増)と推移。コロナ禍やウクライナ情勢などによる世界的なサプライチェーンの停滞で資材価格が高騰し、特に21年度以降、かい離額が拡大し続けているものの、前年度と比べた伸び率は縮小傾向にある。
提供:建通新聞社