国土交通省は、公共発注機関を対象とした建退共の履行状況に関する調査について、調査範囲を人口10万人未満の一部市区町村にも広げる。公共工事での証紙方式に対する履行確認強化へ、自治体による確認の実態をより詳細に把握する。元請け・下請けによる証紙・交付事務の徹底につなげ、建退共に加入する現場の労働者に退職金が適切に行き渡るようにする。10月16日に都道府県・政令市の入札契約担当部局にアンケート調査への対応を依頼する。回答期限は11月10日。
国交省では、2021年度から建退共の電子申請方式が本格実施されたことに合わせ、公共工事での証紙方式に対する履行確認強化の運用を開始。都道府県や政令市などの公共発注機関に対して、工事の契約時に「提出用台紙に貼付した掛金収納書」、完成時に「掛金充当実績総括表」と「工事別共済証紙受払簿」の履行状況を確認するよう、要請していた。
その後1年が経過したことを踏まえ、22年度に履行確認の実態を把握するためのアンケート調査を都道府県・政令市と人口10万人以上の市区(全330団体)を対象に実施。
22年度の調査では「履行確認をしている」と回答した公共発注機関は、契約時で全体の9割程度、完成時で7割程度に及んだ。一方で、「適切な方法で確認している」(契約時に提出用台紙に貼付した掛金収納書、完成時に掛金充当実績総括表と工事別共済証紙受払簿を提出)とした発注機関の割合は、契約時で6割程度、完成時で1割程度にとどまった=グラフ参照。
また、工事完成時の確認で受注者(元請け)による不適正な運用も確認された。
こうした状況を踏まえ、国交省は、より詳細な調査が必要と判断。人口10万人未満の自治体まで対象を広げ調べることとした。調査対象団体は前回の330団体から91団体増やし421団体とする。各団体が発注する土木工事での履行確認状況について、回答を求める。
国交省によると、アンケート結果によっては、事実確認や状況改善のためのヒアリングを行う他、履行確認が未実施など不適切な対応が見受けられれば、団体名の公表などを行う場合もあるとしている。
電子申請方式では、申請に基づいて技能労働者に直接、退職金ポイントが付与され、就労実績に基づき確実に掛け金が納付されるため、証紙の事前購入や交付は不要となっている。
提供:建通新聞社