国土交通省は、直轄土木工事の完成検査での遠隔臨場適用へ、2023年度中に試行し、実施要領をまとめる。現時点で64工事での試行を予定している。試行後、受注者への聞き取り調査を行い、中間技術検査なども含め検査項目(「工事実施状況」「出来形」「品質」「出来栄え」)に対する適用の可能性をそれぞれ判断する。
直轄土木工事では、段階確認や立ち会いなどの監督検査について、先行して22年度から遠隔臨場の原則適用を始めている。引き続き、完成検査などでの適用を目指す。このため省統一の運用ルール(完成検査などの試行要領案)を今年3月に策定。その後、北海道開発局、沖縄総合事務局を含め全地方整備局に試行対象工事をピックアップするように依頼していた。
試行に際しては、まず発注者側の監督職員と検査職員が、検査項目ごとの遠隔臨場の適用の可能性について、調整し提示する。適用の可能性は、汎用(はんよう)的な機器で実施可能な検査項目を「○」、特殊な機器または現場実地が必要となる検査項目を「△」で示す。その上で、遠隔臨場を適用する検査項目を発注者と受注者が相談して決める=表参照。
適用する検査項目の決定後は、受注者が、遠隔臨場を行う検査項目と使用する機器構成、仕様などを固め、施工計画書に記載する。記載内容を発注者が確認した上で、受発注者双方で準備を進める。
受注者側では動画撮影用のウエアラブルカメラとウェブ会議システム、発注者側では検査参加撮影用のカメラとウェブ会議システムなどを準備。検査対象書類の受け渡しは情報共有システム(ASP)などで行うこととしている。
また、遠隔臨場の適用に向けて国交省は、遠隔臨場の取り組み事例集の第2版を作成。新たに中継無線LANの増設、レベル確認用のアタッチメント、骨伝導イヤホン、ICT施工現場端末アプリといった遠隔臨場で活用できる27事例を追加している。
遠隔臨場は、現場に出向かずにカメラ、ウェブ通信といった映像・画像データを利用し、監督検査や完成検査などを実施するもの。受発注者双方で省力化の効果があるとされる。先行する監督検査での遠隔臨場の実績件数は、20年度が700件、21年度が2700件、22年度が3700件と順調に浸透している。
提供:建通新聞社