国土交通省は、河川などに堆積した流木の除去を災害復旧事業(流木災)として行う場合の採択要件を緩和する。気候変動による大雨で流木が増え、自治体の除去費がかさみ、河川護岸などの維持集工事に支障をきたしている現状に備える。2024年度からの流域治水関連の新規施策となる。
洪水後の流木の処理は、一定の基準を超えた場合にのみ、災害復旧事業として採択される。採択要件は、流木が河道断面の「3割程度以上堆積」もしくは、流木の堆積量が通常年での堆積量を2倍以上超え、かつ、おおむね1000立方b以上ある場合となっている。
近年の気候変動による大雨では、流木の堆積が顕著になっている。一方で、過去5年の流木災の採択実績が全国で1件にとどまるなど、採択要件のハードルが高すぎるという制度上の課題が指摘されていた。
流木の除去は自治体が実施しており、災害復旧事業の対象外になると、通常の維持修繕工事費から費用を捻出しなければならない。そのため大雨による流木や塵芥の堆積が増えることで、除去費がかさみ、河川の維持修繕費を圧迫=イメージ図。洪水などで顕在化した護岸のひび割れなど河川管理施設の維持修繕に支障をきたしている。
そこで国交省は、採択要件を緩和する。堆積した流木が河道断面の3割程度に満たない場合でも、河川管理施設などの機能に支障を及ぼしうる場合には、災害復旧事業の対象とできるよう、基準を改定する。
これにより、河川管理施設の迅速な機能回復、維持修繕費の確保による河川管理施設の適切な維持管理、河道内の流木などの撤去による河川環境の改善といった効果が期待される。
流域治水関連の新規の取り組みではこの他、災害復旧事業として、砂防堰堤の機能復旧を行えるようにする。
現在、砂防堰堤で土石流を補足した場合、施設管理者が自らで緊急除石を実施している。施設管理者の費用負担に限界があるため、災害復旧事業として実施できるようにする。
例えば、ことし7月の大雨では九州の赤谷川流域で同時多発的に土石流が発生し、約10万立方bの土石流を補足。次の大雨に備え、早期の機能復旧が必要となっている。
提供:建通新聞社