国土交通省は、「工期に関する基準」について、実効性を高める方向で見直すよう、検討を始める。10月3日に開いた中央建設業審議会(中建審)の総会で、委員らから「2024年4月の時間外労働上限規制の適用を見据え、記載内容の見直しが必要ではないか」といった意見が上がった。次回総会での審議事項としていく。
工期に関する基準は、工期の設定や見積もりに当たり、発注者と受注者が考慮すべき事項を記載したもの。中建審で20年7月に作成・勧告した。
例えば、工期設定の考え方では、公共・民間にかかわらず、発注者に対しては、長時間労働の是正や、技能者を含めた週休2日の確保など、受注者による残業時間規制に向けた環境整備に協力するという責務を規定している。
受注者には、長時間労働や週休2日を確保しないことを前提とした、著しく短い工期とならないよう、受発注者間と元下間で、適正な工期で請負契約することなどを求めている。
また、建設業の法定労働時間は、労働基準法に基づき1日8時間、1週間40時間であると明記。残業時間の上限規制適用については、臨時的な特別の事情があるとして労使が合意した場合でも、「上回ることのできない上限であることに考慮する必要がある」としている。
一方で、建設業の実態は、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、工期に関する基準の作成から2年を経過した22年度時点でも、年間出勤日数が全産業より12日多い。総実労働時間も年間で68時間ほど長く、週休2日の確保が技術者、技能者ともに進んでいない。長時間労働の是正が順調とは言えず、残業時間の上限規制適用へ不安を残している。
こうした現状を踏まえ、東京大学教授の堀田昌英委員は工期に関する基準について、「実効性を確保するために、理念規定を超えたさらに踏み込んだ内容に見直す必要がある」とした。
総会ではこの他、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が提言をまとめたことを報告。国交省は、持続可能な建設業の実現に向け、必要となる法改正への検討を本格させるとした。
建設業への残業時間の上限規制適用まで残り6カ月。法制度の改正だけでなく、現行制度の運用改善で対応できることがあれば、順次具体化していくともした。
提供:建通新聞社