国土交通省は、ワーク・ライフ・バランス(WLB)推進に取り組む企業を総合評価方式で加点評価する取り組みについて、適用範囲を段階的に拡大し、2025年にも全ての工事・業務案件に適用する。これに向けて、現行では土木・建築のAランクに限っている工事での適用範囲を、24年1月から土木・建築のA〜Bランクなどに広げる。主要建設業団体に対して会員企業に周知するよう求めている。
女性活躍推進法の取り組み方針では、総合評価や企画競争など価格以外の要素を評価する公共調達案件において、WLB推進企業を評価することとしている。国交省はこれに基づき、直轄工事での加点措置を2018年に開始。WLB推進に取り組む土木、建築Aランクの企業を、段階選抜方式の第一段階選抜での「企業の能力等」で加点してきた。
一方で、21年度の各省庁の調達実績を見ると、適用が可能だった案件に対して、実際に加点を行った案件の割合は、国交省直轄案件では5%(金額ベース)にとどまった。そこで、取り組みを拡大することとした。
1月からは、総合評価工事の土木A〜Bランク(港湾土木含む)、建築A〜Bランク、技術提案・交渉方式での優先交渉権者との業務契約にも適用する。女性活躍推進法に基づく「えるぼし」、次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」、若者雇用促進法に基づく「ユースエール」の認定企業であれば1点を加点する。
国交省は、加点対象の拡大に向け、8月に地方整備局などに通知した上で、9月に業界団体に説明。おおむね1年後には業務を含め全調達案件に適用するとした。役務は全案件で適用済み。
WLBの尊重を求める社会的な要請は近年、大きく高まっている。一方で建設産業は、他産業と比べて休日が少なく、残業時間も多い。従来の働き方では、女性活躍のハードルは高いままだ。少子高齢化で産業間の人材獲得競争が激しくなる中、男女が仕事と育児・子育てを両立できる環境を整えるなど、WLBの改善を通じた業界のイメージアップが急がれている。国交省による加点措置の拡大は、企業の前向きな取り組みの後押しとなりそうだ。
提供:建通新聞社