リニア中央新幹線静岡工区の環境保全に関する国土交通省の有識者会議は、9月26日の会合で、工事の影響に対する予測・分析・評価を踏まえて対応を随時見直す「順応的管理」の提言を盛り込んだ報告書案を提示した。トンネル掘削による環境への影響を最小化するとともに、沢の管理流量の範囲を逸脱するような場合は工事の進め方を見直す必要があるとした。
このため国には、環境保全措置やモニタリングが着実に行われているかの継続的な確認を検討するよう求めた。一方、リニア中央新幹線の事業者であるJR東海に対しては、環境保全措置・モニタリング対策に取り組むとともに、関係機関との良好なコミュニケーションが必要だとした。
リニア中央新幹線事業を巡っては、南アルプストンネルの掘削に伴う大井川の流量減少を静岡県が懸念。国交省は事業の早期実現と建設工事の影響の回避・低減を同時に進めるとの考えの下、JR東海への助言・指導を行うため有識者会議を立ち上げた。
報告書案では、環境保全に関する検討の方向性を整理。トンネル掘削の影響を把握するため、重点的にモニタリングする11の沢を選定した。流量減少を抑えるため、断層とトンネルの交差箇所周辺の地山には薬液注入を行うこととした。その上で、トンネルの掘削前、掘削中、完了後の各段階で沢と、重要な生物種の生息状況などを調べることも盛り込んだ。
また、トンネル湧水についても条例よりも厳しい基準で管理し、将来にわたってモニタリングするとした。
提供:建通新聞社