国土交通省は、建設業4団体との意見交換会で、賃上げ関連の取り組みについて、話し合った。国交省からは斉藤鉄夫大臣をはじめ省幹部が出席、建設業4団体からは全国建設業協会の奥村太加典会長らが出席して19日に行われた。斉藤大臣は、賃金の下落に直結するダンピング受注を厳に慎むよう要請した。一方、全建の奥村会長は、賃上げ加点措置の速やかな終了などを求めた。
会合の席上、斉藤大臣は、10月から公共事業労務費調査が始まることを踏まえ、建設業界に対して、賃金の下落に直結するダンピング受注を厳に慎むよう強く要請した。さらに「労務費を適正に確保して下請け契約を締結し、技能労働者に適切な賃金を支払うよう改めてお願いする」と続けた。
その上で、「建設業は、国民生活や社会経済を支える重要な役割を担っている。持続的な発展には、人材の確保・育成、そのための賃上げ、労働時間の短縮が避けられない」「明日の建設業のために、苦しい現実を乗り越えていけるよう、業界と連携し、一体となって取り組んでいく」と述べた。
さらなる賃上げと、技能者への賃金の行き渡りを確実にし、持続可能な建設業の実現を目指す。
労務費調査は国交省と農林水産省が毎年10月に実施している。両省発注の公共工事から約1万工事を無作為に抽出。工事に従事する技能者約11万人に支払われた労務費を把握し、次年度の公共工事設計労務単価設定の基礎資料としている。
今回の調査では、男性育児休業の取得状況や、インフレ手当の支給状況も新たに把握する。元請けから技能者に支払われる手当の支給額についても記入を求める。
■奥村会長「賃上げ加点は速やかに終了を」
国交省直轄工事などで実施している総合評価方式の賃上げ加点措置について、全建の奥村会長は、会員企業で賃上げの取り組みが進む一方、不安の声があるとし、速やかな終了を含め、制度の改善を求めた。
奥村会長は、全建で実施した賃上げと加点措置についてのアンケート調査結果を紹介。「会員企業の8割以上が賃金を引き上げており、うち4分の1の企業が5%以上の引き上げを行っていた」とし、賃上げの取り組みが一定の会員間で進んでいる状況を説明した。
一方で、会員からの「いつまでも続けるようだと経営を圧迫する」「賃上げを見越した内部留保も必要となり、効果がマイナスに働く」「未達成の減点措置が厳しい」といった声を紹介。その上で、「速やかに終了していただくか、継続するとしても賃上げ実績による自己評価や、複数年度にわたる評価を認めるなど、過度な負担にならないよう改善をお願いしたい」とした。
さらに、賃上げに必要な設計労務単価の引き上げの継続、技能者以外の賃上げのための現場管理費、一般管理費の引き上げも求めた。
国交省と建設業4団体の意見交換会では、「おおむね5%の賃金上昇の実現」を目指し、全ての関係者が可能な取り組みを進めることを再度確認した。
提供:建通新聞社