国土交通省は、国土強靱(きょうじん)化をはじめとした公共事業を進める上で、工事を受注する建設業界の施工余力に問題のないことを確認した。9月19日に国土交通大臣と建設業4団体との意見交換会を開催。元請け3団体と専門工事業1団体の意見を聞いた。賃上げや働き方改革の取り組みを進めていくことも改めて申し合わせた。
施工余力については、大阪万博でパビリオンの着工が遅れていることなどを踏まえ、建設業界の施工余力を疑問視する報道が一部にあることから、斉藤鉄夫国土交通相が業界団体に意見を求めた。
日本建設業連合会の宮本洋一会長は、「施工余力に疑問を呈する向きもあるが、近年受注高は横ばいで、生産性も上昇している」とした上で、「将来的な見通しを持って計画的に発注してもらえれば、十分な施工体制を確保することが可能だ」と答えた。併せて、国土強靱(きょうじん)化について、5か年加速化対策を上回る予算額でのポスト計画(国土強靱化中期計画)の早期策定などを要望した。
全国建設業協会の奥村太加典会長は、「一部の地域、職種に人手不足が見られるものの、不調・不落は減少傾向で、その主な発生要因は官積算との乖離(かいり)である。業界全体としての施工余力に総じて問題はない」と述べた。
全国中小建設業協会の土志田領司会長、建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長も「問題なし」と言い切った。
万博パビリオンの遅れの原因について国交省の担当者は、「例えば、パースだけ示し受注を検討してもらうような、そもそも発注可否の検討に必要な施工条件などの情報が不足しているケースが多い」と指摘。「施工余力とは別問題」との見方を示した。
斉藤大臣は、「公共事業予算の執行状況をみても十分な施工余力があると考えている」と発言した。
国交省がまとめた公共事業予算の執行状況によると、23年度予算の執行率は6月末現在で62・0%(全体予算9・9兆円に対して、6・1兆円を執行)と、昨年同時期の61・9%より0・1ポイント上がっていた。
この他、残業時間の上限規制適用など24年問題への対応では、賃上げや働き方改革について意見を交換。賃上げに向けては、「おおむね5%の賃金上昇の実現」をことし3月の意見交換で申し合わせたことを4団体に改めて確認。技能者の適正な賃金水準の確保へ、賃金の上昇が労務単価の上昇につながる好循環を維持できるよう「全ての関係者が可能な取り組みを進めることが重要」とした。
2024年度概算要求については、前年度比1・19倍となる公共事業関係費を計上。安定した雇用、人材確保を図るため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を含めた公共事業予算のさらなる確保が必要とした。
提供:建通新聞社