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2023/09/11

持続する産業を実現 建設業法改正へ

 持続可能な建設業の実現に向け、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が提言をまとめた。受発注者間での請負契約にかかるリスク分担をより適切にするとともに、標準労務費の勧告や不当に低い請負代金の禁止により、技能者への賃金の行き渡りを担保する。さらに、魅力ある就労環境を実現すべきともした。これらの施策の実現へ、国交省は今後、必要となる建設業法など関連法制度の改正への動きを本格化する。9月8日に基本問題小委の第5回会合が開かれた。
 提言では、「請負契約の透明化による適切なリスク分担」「適切な労務費等の確保や賃金の行き渡りの担保」「魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上」―の三つの観点から、それぞれ講ずべき施策をまとめた。
 請負契約の透明化による適切なリスク分担では、受注者から発注者へのリスク情報の提供を義務化したり、請負契約に予備的経費に関する事項を明記すべきとした。コストに関する情報を開示する「オープンブック・コストプラスフィー方式」の標準請負契約約款を制定するようにも求めた。この他、価格変動に伴う請負代金の変更条項を契約書上明確にすることや、請負代金や工期に影響を及ぼす事象が生じた場合に、受発注者間で誠実に協議することなども盛り込んだ。
 適切な労務費等の確保や賃金の行き渡りの担保では、請負契約での労務費の相場観を示す「標準労務費」を中央建設業審議会が勧告すべきとした。これを労務費を原資とした不当な価格競争(廉売行為)の規制基準にもする。併せて、適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項を建設工事の標準約款に追加し、技能者への確実な賃金の支払いを実現する。
 労務費を確保できないような、不当に低い請負代金の契約締結については、国土交通大臣の勧告対象に民間事業者も加えるよう制度を改める。受注者による不当に低い請負代金の契約も禁止し、指導・勧告対象としていく。
 魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上では、適正な工期確保のために、受注者による著しく短い工期を禁止する。生産性向上へは、建設現場を管理するための指針を国が作成し、特定建設業者に指針に即した現場管理に努めることを求める。監理技術者等の専任制度も合理化すべきとした。
 基本問題小委員会では、「持続可能な建設業の発展には、担い手の確保・育成が不可欠」という認識の下で、建設業団体と民間発注者団体の双方が歩み寄り、民間工事も含め、建設産業のサプライチェーン全体がよりうまく回り、お互いがウィンウィンになる施策について知恵を出し合った。

提供:建通新聞社