国土交通省がまとめた直轄工事でのスライド条項の適用状況によると、2022年度は919件の適用があった。21年度実績の4倍を超える大幅増となっており、高騰する資材価格への対応が一定程度、進んだことが裏付けられた。資材価格は全体的には高止まりの状態で一部には落ち着きも見られる一方、セメント・生コンなどではさらなる騰勢が継続。国交省は引き続き、スライド条項の適切な運用と、自治体への周知に取り組むとしている。
国交省の調査によると、直轄工事でのスライド条項の適用状況は、21年度が全体スライド15件、単品スライド28件、インフレスライド178件の合計221件だったのに対し、22年度が全体スライド33件、単品スライド274件、インフレスライド612件の合計919件と4倍超の大幅増となった=表参照。
直轄工事と比べ、自治体発注工事ではスライド条項が十分に運用されていない現状がある。国交省は、直轄工事で率先してスライド条項を運用しながら、自治体に制度を周知してきた。
■FAQを公開
さらに、適切なスライド活用につなげるため、スライド条項に関する質問回答集(FAQ)も作成。単品スライドとインフレスライドが併用できることなど、受注者が申請に際して疑問に思う点への解答をまとめている。
例えば、インフレスライドの規定では、「スライドの適用対象工事の確認時期は、賃金水準の変更がなされた時とする」となっている。このため公共工事設計労務単価が改定される毎年2〜3月ごろにしか申請できないと思い込んでいる受注者が多いという。
これに対しては、「インフレスライドの申請のタイミングが設計労務単価の改定時期だけに限られない」と解答している。
FAQは国交省のホームページ(https://www.mlit.go.jp/tec/content/001577480.pdf)からダウンロードできる。
昨年後半から続く建設資材の価格高騰を受けて、国交省は官民の工事発注者にスライド条項の適切な設定・運用、必要な契約変更の実施を促している。
昨年11月に開かれた公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連、根本匠会長)では、根本会長が「単品スライドとインフレスライドの違いなど、制度の周知内容が理解されていない面もある。発注者は、受注者に寄り添って制度の仕組みをしっかり伝え、適切な運用につなげてほしい」と呼びかけていた。
提供:建通新聞社