国土地理院は、衛星測位によって精密な標高を把握する「GNSS標高測量」を導入する。平時の測量業務を効率化するだけでなく、地震などによって大規模な地殻変動が発生した場合でも迅速に測量成果を改定できるようにし、復旧・復興工事の迅速化につなげる。
8月29日に開いた測量行政懇談会の基本政策部会で提示した「基本測量に関する長期計画」の案に盛り込んだ。
国土地理院は現在、重力データに基づく「精密重力ジオイド」の構築を進めている。現行の仕組みと比べて山岳部や沿岸域で精度が向上する他、大規模地震でも値がほとんど変わらないという。
国土地理院はこれに基づき、衛星測位で標高を決定する「GNSS標高測量」を導入することを検討。これにより、全国の標高成果を刷新する。精密重力ジオイドと衛星測位で定めた電子基準点の標高を基礎とし、その間を水準測量でつなぐ体系とする考えだ。
迅速に精密な標高が得られる他、地殻変動による変化を継続的に把握できるようになる。水準測量の起点からの距離に応じた標高の誤差や、特に東北地方で見られた地殻変動による海面と標高とのずれを解消することができる。測量成果の経時的な変化を管理する「4次元国家座標」の実現に向けた基盤としたい考えだ。
基本測量に関する長期計画は、全ての測量の基礎となる基本測量について、目標と達成のための施策を示すもの。対象期間は2024年度から10年間とする。GNSS標高測量の導入の他、インフラ分野のDXにつながる新たな測量技術に関するマニュアルの整備や、作業規定の準則への反映なども盛り込む。
提供:建通新聞社