国土交通省は、1級河川の流域全体をデジタル空間に再現する「流域治水デジタルテストベッド」を整備する。新たな水害対策の効果を検証できるようにして、官民連携による治水分野のイノベーションを促進する。2023年度はテストベッドの設計や、プロトタイプの開発・試行を予定。25年度の本格運用を目指す。
デジタルテストベッドは、デジタル空間の実験場という位置付け。降雨量の予測と3次元地形データ、土地利用情報、地盤データ、河川での治水対策などを組み合わせて、平常時と洪水時の流域の状態を再現する。治水対策の効果を可視化することで、実効性の検証や、流域の関係者間の対話に活用する同じ条件で複数の治水対策を比較して評価することもできるようになる。
5月には、九州地方整備局管内の山国川を対象に、治水対策の在り方を話し合う流域治水協議会でデジタルテストベッドの試行モデルを提示した。参加者からは「非常に分かりやすい」との声が寄せられたという。モデルを活用して関係者から意見を募り、実際に設計にも反映していく。
本格運用の開始後は、デジタルテストベッドを民間企業にも開放する。国交省として治水対策上の課題を示し、民間の知恵を取り入れていく。気候変動により激甚化・頻発化する災害に備えるため、関連する技術の向上を加速させる。
流域治水対策の効果を高めるには、河川管理者だけでなく、沿川の自治体や民間事業者、市民の参画と連携が欠かせない。デジタルテストベッドを介して災害リスクを分かりやすく共有できるようにし、関係者間のリスクコミュニケーションを深める。
提供:建通新聞社