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2023/09/12

建設トップランナーフォーラム「#戦略的広報のすゝめ」F

 農林水産省公式YouTubeチャンネル「BUZZMAFF ばずまふ」は2019年に開設。広告代理店やコンサルを一切介さず、企画から撮影、編集、配信に至るまで職員のみで手掛け、農林水産物の魅力や農水省の仕事について発信している。開設から3年半がたち、チャンネル登録者数は17万人を突破。行政機関によるYouTube再生回数は、1本当たり100〜1000回が相場と言われる中で、100万回再生を超える動画も生み出した人気YouTuberだ。
 チャンネル開設当初から動画制作に携わる白石優生氏(農水省大臣官房広報評価課広報室)は、「動画広報の勝ち方」と題する講演でYouTubeを通じた広報戦略を紹介した。
 「ばすまふ」の動画の中で最初に100万回再生をたたき出したのは、「花いっぱいプロジェクト」のPR動画。新型コロナウイルスの影響で需要が減少した花卉(かき)を多くの人に買ってもらえるように、職員2人の周りに花がどんどん増えていくというシュールな演出で訴えた。この動画がさまざまな人の目にとまり、プロジェクトの認知と消費の落ち込みの食い止めにつながった。
 「花いっぱいプロジェクト」の次に再生回数を稼いだのは、牛乳の消費拡大を呼びかける「プラスワンプロジェクト」に関する動画だった。職員が牛の着ぐるみを着ている様子から「やらされている感、最高」とツイッターで話題になり、1・8万リツイートを獲得した。当時5000dの牛乳廃棄が懸念されていたところ、動画公開後には家庭用牛乳の消費量が2割ほど伸びたという。
 「ばずまふ」が成功した理由について、白石氏は「マーケットインの発想」だと解説する。「視聴者はこれが知りたいだろう」というマーケット分析から入って、視聴者が本当に欲しがっている動画を作る。これまで注目されていなかった政策テーマが意外にも視聴者を取り込むこともあり、「政策にも影響を与えられていると思う」とその影響力を示した。
 花卉(かき)や牛乳の消費減少のように、「都合の悪い情報は出したがらないと思われている行政機関が、国民が知りたい情報を逃げずに出す」という攻めの姿勢を貫く。行政と民間、さらには業界によって、“バズる”情報発信の仕方は異なるのかもしれないが、「企業PRにも当てはまることがある」と伝えた。
 農水省によるYouTubeチャンネルの開設は、コロナ禍で行政機関への取材が厚生労働省に集中して、「発信したい情報があるのに報道されない」ことに端を発した企画だった。白石氏は今回の経験を通じ、「農水省もSNSの可能性に気付いたのでは」と語り、“バズる”という抽象的な効果だけではない結果に自信をのぞかせた。
(地方建設専門紙の会・建通新聞社)