国土交通省が技能者の賃上げ方策として提案する「標準労務費」について、具体化に向けた議論が進んでいる。国交省は、持続可能な建設業への法制度を探る基本問題小委員会で、標準労務費に関する制度設計・運用上の新たな論点を提示。工種によって幅を持たせて勧告したり、廉売行為を制限するための「物差し」として機能するよう、運用方法を整理する必要があるとした。7月27日に第3回会合を開いた。
標準労務費は、1d・1平方b当たり(単位施工量)の標準的な労務費として、請負契約での労務費の相場観を示すもの。新たな論点によると、工種・歩掛ごとの「標準的な規格(仕様・条件)」を特定した上で、設計労務単価と掛け合わせて算出することとした。中央建設業審議会が作成・勧告することで、労務費を原資とする廉売行為を制限し、公正な競争の促進、技能者への賃金の行き渡りにつなげる。
一方で、国交省は、歩掛ごとの規格が多数あることを踏まえ、「工種によっては幅(例えば1平方b当たり8100円〜9100円)を持たせたり、段階的に勧告したり、労務費率の高い工種に限って勧告するといったことが考えられないか」と投げ掛けた。
直轄工事の歩掛を見ると、土木と営繕で異なり、その数は土木だけでも1386種類に上るという。さらに、歩掛にはさまざまな規格があり、例えば、型枠工(土木)で10規格、掘削工では61規格も存在するとされる。こうした中から、工種ごとに標準的な規格を特定していく必要がある。そこで国交省は、工種によって二つ以上の標準的な規格を特定し、幅を持たせて勧告することを想定した。
運用上の論点では、標準労務費を一定程度下回った取引ついて、全てを指導対象とするのではなく、「廉売にあたる」とした上で調査を行い、行政指導などを実施する考えを示した。
賃金の行き渡りに向けては、「まずは公共工事で、建設キャリアアップシステムの活用を念頭に、受注者による技能者登録・賃金の支払い状況・施工体制の確認を行う方策を試行するようなやり方も必要ではないか」ともした。
今回の会合では、賃上げの他、「請負契約の透明化による適切なリスク分担」や「働き方改革」の制度設計についての議論も深めた。適切なリスク分担へは、オープンブック・コストプラスフィーによる標準約款を新たに制定することで、請負契約方式の選択肢の一つとすることを目指すなどとした。
次回会合から議論の取りまとめに入る。
提供:建通新聞社