中小企業庁は、3月の価格交渉促進月間に合わせて行った、企業活動に伴うコストアップ分の価格転嫁状況に関する調査の結果をまとめた。建設業が発注者や元請けに価格転嫁を要請し、コスト増分の何割まで転嫁してもらえたかを示す「価格転嫁率」は43・5%で、昨年9月の前回調査から1・1ポイントダウン。主な業種別の転嫁率に関する順位は、全22業種中13位から16位へと転落した。
価格交渉月間の成果を確認するため、4月から5月にかけてアンケートを実施し、1万7292社から回答を得た。
建設業が受注側の取引に注目すると、価格転嫁率は43・5%。原材料費は44・5%で、0・6ポイントダウン。労務費も0・1ポイントとわずかに下がった。エネルギーは1・7ポイントアップした。
一方、建設業が下請け工事業者や建材業者に発注する側の取引を見ると、価格転嫁に応じた割合は44・3%で0・5ポイントダウンした。順位は17位で横ばいだった。原材料費の転嫁率は45・4%で0・2ポイント、労務費は40・6%で2・4ポイント、エネルギーは35・1%で3・6ポイントそれぞれアップした。
受注者と発注者のどちらの立場でも、原材料費で転嫁が比較的進んでいる一方で、労務費やエネルギーコストの転嫁が進んでいない傾向が見られた。
公正取引委員会の下請けGメンによるヒアリングでは、「エネルギー費用、労務費等の上昇分は取引価格に転嫁はできていない」とする声が寄せられた。価格交渉を申し入れても協議に応じてもらず、支払いを止められそうになった例もあったという。普段から取引先と良好な関係を構築し、賃金アップ分を価格に転嫁できたという企業もあった。
■価格転嫁で賃上げ進む
全業種を対象とした調査では、価格転嫁率が高い企業ほど賃上げ率が高くなる傾向も確認できた。中企庁では、さらなる価格転嫁対策として7月に「価格転嫁サポート窓口」を新設する。8月以降、発注側企業ごとの価格交渉・転嫁状況リストを公表する他、業界団体による取引適正化の取り組みのフォローアップなども公取委と合同で実施する。
提供:建通新聞社