特に民間工事で、労務費や法定福利費を価格競争の材料とする、いわゆる労務費ダンピングが行われ、そのしわ寄せが2次下請けにまで及んでいる恐れがあることが、国土交通省の調査で分かった。1・2次下請け間での労務費と法定福利費の支払い状況を確認するため、モニタリング調査を実施した。調査結果を踏まえ国交省は、適正な労務費と法定福利費の確保に向けて、受発注者に対して注意喚起を強めるとしている。
今回の調査は、2021年度の元請けを対象とした調査の結果を踏まえ実施した。元請けへの調査では、元請けと1次下請け間の7割超の契約で、契約書に法定福利費が明示されていたにもかかわらず、標準的な労務費率に比べて労務費が少なかったり、必要な法定保険料率(15・4%など)が計上されていなかったり、算出根拠が不明なものが数多く見られた。そこで1・2次下請け間への影響を把握するため、本年度早々にモニタリング調査を実施。元請けへの調査を行った同一の工事で、1次下請けに、2次への労務費と法定福利費の支払い状況を確認した。
これによると、元下間で法定福利費が少なく計上されていた案件では、1次下請けが自らで足りない法定福利費分を捻出し、必要な額を確保しているケースが一部に見られた。ただ、多くの場合は、1・2次間でもそのまま少なく計上されていた。中には、元下間では適正に法定福利費が計上されているにもかかわらず、1・2次間で少なく計上されているケースがあった。
この他、鉄筋や型枠などの標準的な積算単価から著しく低い単価で積算し、2次にさらに低い単価で積算しているものも見られた。
国交省の担当者は、「いずれのケースも建設業法19条の3(不当に低い請負代金の禁止)に該当する恐れがある」とした上で、「特に元請けには、労務費と法定福利費の確保で、施工体制に関わる全ての下請けに対する指導義務がある」としている。
提供:建通新聞社