国土交通省は、持続可能な建設業の実現へ、必要な制度改正についての議論を始めた。特に民間工事での受発注者間のリスク分担など、より良いパートナーシップに基づく請負契約の在り方が焦点となる。5月22日に学識者や業界関係者を交えた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会を立ち上げ、第1回会合を開いた。具体的な議論は2回目以降となる。今夏にも中間取りまとめを行う。
建設業界では、2024年4月からの時間外労働の上限規制適用や、将来にわたる担い手の確保を見据え、週休2日の定着をはじめとした働き方改革や生産性向上、工事従事者の処遇改善などが重要な取り組みとなっている。国交省では課題解決へ、22年度に有識者の検討会(持続可能な建設業に向けた環境整備検討会)を設置。業界の構造的な問題も含め、持続可能な建設業の妨げとなっている課題と具体策の方向性を探り、ことし3月に答申を得た。
答申では、特に民間工事での総価一式の請負契約について、資材高騰局面では、価格変動リスクを受注者だけが背負う形になっており、持続可能な建設業の妨げになっているとし、在り方を検討する必要があるとされた。
具体的には、まず資材や労務の実勢価格、リスクに対する予備的経費、特別に予想されるプレミアムリスクなどの認識・情報を受発注者双方で共有(情報の非対称性の解消)するなど、請負契約の透明性を高める。その上で、受発注者間のコミュニケーションを促す措置を講じ、より良いパートナーシップを構築する。これにより建設プロセス全体の適切なリスク分担につなげ、持続可能な建設業の実現を目指すといった方向性が示されていた。
初会合では小委の目的などを確認した。請負契約の在り方については次回以降の会合で、「請負契約の透明化による適切なリスク分担」「賃金引き上げ」「働き方改革」の三つの観点から取るべき方策を検討することになる。
冒頭あいさつに立った国交省の長橋和久不動産・建設経済局長は、「4年前の小委では、長時間労働の是正や処遇改善、生産性向上を議論し、新・担い手3法をつくった。ただ、担い手確保での業界の危機感は増している」とした上で、「今回の小委では、建設生産システムに関わる根本的な制度であり、働き方から産業構造そのものに至るまで影響を及ぼしている、建設工事の請負契約について、社会情勢を踏まえ、在るべき姿を議論してほしい」と述べた。
基本問題小委の委員長は、東京大学大学院の小澤一雅特任教授が務める。
提供:建通新聞社