建築文化の振興をテーマとして文化庁が4月21日に開いた有識者会議で、近現代の建築の保全・活用に向けた法制度の整備がテーマに挙がった。委員として参加した建築家の隈研吾氏が、既存不適格建築物や相続税など、築年数のたった建築の保全を巡る制度上の課題を指摘。他の委員からは、街並みの維持と都市開発の両立に向けた制度設計を求める意見も寄せられた。
会議は、文化的に価値の高い近現代の「名建築」の保全などを議論する場。有形文化財や伝統的建造物群など、歴史的な評価の定まった建築を保全する仕組みは整備されているものの、竣工後50年程度の建築は制度から漏れている。
21日の会議では、隈氏が既存不適格建築物の増改築時に現行規制への適合を求められる現状を指摘。「ある程度、街並みを守るためにどうするべきか」と問いかけ、保全に向けた指針が必要だとした。
政府税調でも委員を務める佐藤主光一橋大学教授は、既存建築の流通市場の活性化や、地域に貢献する活用を前提とした相続税の猶予措置などの制度整備を唱えた。
大成建設の堀川斉之シニア・アーキテクトは、リノベーションと保全を組み合わせた事例が出てきていることを紹介。「建築の再利用に向けて、行政と民間の合同で保存の在り方を検討」するような仕組みを求めた。
座長の後藤治工学院大学理事長は、地域単位で保全・開発に関わるルールをつくる必要があるとした。建築文化の振興・保全のための法整備も訴えた。
5月に開催する会議で議論を締めくくり、報告書にまとめる。
提供:建通新聞社