国土交通省は、建設業への時間外労働の上限規制適用まで1年を切ったことを踏まえ、2023年度早期に「適正な工期の確保」に特化した実態調査を実施する。特に民間工事について、労働基準監督署の担当者と工事現場を訪問し、工期の設定状況を確かめる。厚生労働省が主催する「建設業関係労働時間削減推進協議会」への参加も予定。「著しく短い工期の禁止」徹底に向けた取り組みを強める。
適正な工期の確保に特化した実態調査は、国交省が適正取引のモニタリング調査として実施する。整備局と労基署の担当者が現場を訪問し、工期の設定状況を確認した上で、法制度の周知、自主的な改善を促す。一方、建設業関係労働時間削減推進協議会では各地の説明会に国交省も参加する。厚労省によると、本年度から協議会メンバーに民間発注者も加わる。
上限規制適用への備えを万全にする背景には、「民間工事で建設業法が規定する『著しく短い工期の禁止』に違反するような現場が少なからずある」と、国交省不動産・建設経済局建設業適正取引推進指導室長の山王一郎氏は言う。
例えば、実際に22年に行われた工期12カ月、請負代金20億円程度の民間工事では、当初から工期がタイトで不測の事態も起こった。にもかかわらず工期延長が認められなかった。工期不足のしわ寄せは下請けへと及び、工期末の2カ月間は4週ゼロ休の超過勤務が下請けに求められた。元請け業者の工事担当者によると、社内で1カ月の工期延長を主張したが、営業担当者の判断で発注者との工期延長の協議は行われなかったという。
こうしたケースでは注意喚起通知を元請けに対してだけでなく、必要に応じて発注者へも行う。
中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」では、発注者の責務として、上限規制適用に向けた環境整備に協力することが定められている。工期の延長や工事費用の増加が発生する場合、施主と元請け、元請けと下請けは、双方対等の立場で協議を行う必要がある。山王氏は「当初の契約で協議方法などを明確に定めておくことが大切だ」とした。
3月の国会答弁で、建設業界の最優先課題となる担い手確保について、国交省の長橋和久不動産・建設経済局長は、「賃上げとともに週休2日が確保できる働き方改革を強力に進めていくことが重要だ」とした上で、「公共工事では直轄の取り組みを自治体に広げていく。民間工事ではモニタリング調査などを通じて、工期の適正化に資するよう、厚労省とも連携し取り組んでいく」と答えた。
提供:建通新聞社