元下間の請負契約で、9割超の見積書に法定福利費が書き込まれていた一方で、標準見積書が使われた割合が4%にとどまることが国土交通省の調査で分かった。国交省は、算出根拠が不明な見積もりも多かったことから、引き続き、標準見積書の使用を徹底するよう促していく。
調査では、下請けに標準見積書の使用を働き掛けているかどうかを元請けにヒアリングした。使用を働き掛けていた元請けの割合は全体の15%で、このうち実際に標準見積書が下請けから提出された割合は4%にとどまった=グラフ@。
見積書と契約書への法定福利費の明示状況も調査した。92%の見積書に法定福利費が明示されていたものの、契約書ではその割合が74%に低下し、見積書の段階より18ポイントも低かった=グラフAB。契約金額に占める法定福利費の割合が著しく低い契約も1割超あった=グラフC。
調査結果では、法定福利費を明示する取り組みの浸透が伺えた。反面、大半の現場で標準見積書が使われておらず、調査を担当した山王一郎建設業適正取引推進指導室長は、「法定福利費が明示されていたにしても算出根拠が不明な見積書が数多くあった。標準見積書をしっかり使用してもらい、契約書にも法定福利費を明示していくことが重要だ」としている。
標準見積書では、建設業者が技能者に支払う賃金に加算する、社会保険や労働保険、雇用保険などの法定福利費が関係法令に基づき算定されている。
今回の調査は、完工高1000億円未満の建設業者を中心に支店、営業所を含む149カ所を対象に、元下取り引きの実態をモニタリングしたもの。対象工事は、公共・民間を問わず、元請けが2018〜22年度に発注者から直接請け負った中規模工事。「工期が1〜3年程度、工事費が1〜50億円程度」の学校や公共施設、マンション、病院、ホテルの建設工事、河川災害復旧工事、道路改良工事などとなっている。
提供:建通新聞社