国土交通省は、「持続可能な建設業」を実現するための方策について、最終の取りまとめに入った。2月6日に有識者会議を開き、技能者に賃金を確実に行き渡らせるための考え方などを示した。委員らは大筋で賛成した。次回の会合で骨子案をまとめ、3月末にも最終の取りまとめを行う。2023年度にさらに議論を深め、具体策を打ち出していく。
持続可能な建設業を実現するためには、担い手を確保・育成することが必要。国交省では、特に技能者の処遇改善と、現場の生産性向上の実現が喫緊の課題と考えている。
会合ではこうした課題の背景にある「重層下請け構造」について、国交省が、元下双方の果たすべき役割や責任を明確にすることで、品質や安全性、賃金の行き渡りで問題が生じないようにする方向性を示した。
具体的には、中央建設業審議会(中建審)で「通常必要と認められる労務費」の水準を定めて勧告したり、労務費の原資を確保できないような低い価格での元下契約や下下契約(不当廉売)を制限することで、労務費へのしわ寄せを防ぐ。受注者が発注者に対して、適切な賃金の支払いを約束する「表明保証」の導入なども考えられるとした。
委員らは、国交省が示した方向性について、大筋で賛成の意向でいる。委員の一人は「標準的な労務費を勧告し、賃金の相場感を示すことで、技能者自らが適正な年収を把握できる。経営者側も技能者の年収が妥当か判断できるようになる」と述べた。
会合ではこの他、中建審が作成・勧告した民間建設工事標準請負契約約款(民間約款)の利用促進や、価格変動時の協議の考え方をより具体的に明示していく方向性も出された。
委員からは「契約上の優越性もあり、受注者から発注者へ協議を申し入れることは難しい面もある。発注者から受注者に意向を確認するような方法も考えるべき」といった意見もあった。
提供:建通新聞社