国土交通省は、「持続可能な建設業」を実現するための方策について、最終取りまとめへの論点を整理した。契約関係では、中央建設業審議会が作成・勧告した民間建設工事標準請負契約約款(民間約款)の利用促進や、不当に低い請負代金への対応などについて議論を進める。技能者に賃金を確実に行き渡らせるため、重層下請け構造の問題点を洗い出し、改善を促していくことも論点の一つとした。3月末にも最終の取りまとめを行う。2月6日に「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」の第7回会合を開いた。
民間約款については、中建審が民間の標準約款を作ったのにもかかわらず、約款の規定が契約書に落とし込まれないなど、利用されていない現状がある。国交省は「民間の標準約款の原則的利用の促進」や「請負代金変更条項の契約書への明示」などを通じて、技能者の賃金を含む工事原価が不当に低くならないようにする方向が考えられないかとした。
請負代金の変更協議を求める考え方を明確化し、見積もりや契約協議時に、民間発注者が、受注者に説明するといった工夫も探る。
不当に低い請負代金への対応では、建設業法に基づく勧告対象を民間発注者へ拡大。不適当な行為に対する「注意」や企業名を「公表」するといった方向性も示した。
契約関係ではこの他、コストプラスフィー契約を民間工事の新たな契約手法とすることなども論点とした。実際に工事でかかった材料費や労務費などの実費(コスト)と、報酬(フィー)から最終的な請負代金を決定するもの。材料費や労務費が実費精算となるため、民間工事の契約手法で一般的な総価請負方式と比べ、コストの透明性を確保できる。労務費ダンピングが起こりにくく、技能者の賃金の原資確保につながるとされる。
重層下請け構造については、重層化する原因を詳細に把握した上で、品質や安全性、賃金の行き渡りに問題が生じないよう措置することを考える。具体的には、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した施工体制の見える化、技能者個人の技能や下請け企業の施工力の見える化、非財務情報の公開といった対応を掲げた。中長期的な課題として、細分化が進んだ許可業種の合理化なども挙げた。
提供:建通新聞社