国土交通省が総合評価落札方式での賃上げ企業に対する加点状況を調べたところ、競争参加者に占める賃上げ表明企業の割合は全工事平均で63%となった。これに対し、過去3年間で年平均1件以上受注している企業では75%が賃上げを表明するなど、直轄工事の受注実績が多い企業ほど賃上げを表明する傾向にあった=グラフ参照。国交省は表明しなかった企業の要因を調べ、表明率のさらなる向上を目指す。
調査の対象工事は、国交省が総合評価落札方式で4月から8月末までに契約した2503件。入札に3308社が参加し、うち2078社が賃上げを表明した。
賃上げ表明した企業の割合を直轄工事の過去の受注実績別に見ると、全工事の平均表明率63%に対して、過去3年間で3件(毎年1件)以上を受注した企業では、表明率が75%と全工事平均より12ポイント高くなっていた。
等級別の表明率は、A等級が100%、B等級が87%、C等級が75%、D等級が44%となった。このうちC等級の表明率75%を、受注実績が年平均1件未満の企業に限ってみると57%まで落ち込む一方、年平均1件以上の企業では81%に上った。
表明率の推移を月ごとに見ると、4月時点では50%(競争参加者数727社)だったのが、5月に56%(1429社)、6月に60%(2220社)、7月に62%(2901社)、8月に63%(3308社)となった。
工種別では、アスファルト舗装と鋼橋上部の表明率が85%と最も高く、以下、橋梁補修が78%、一般土木が76%で平均以上となった。平均以下は、維持修繕(61%)、塗装(54%)、建築(50%)、電気設備(41%)、受変電設備(39%)、通信設備(35%)、造園(33%)。
国交省の分析によると、全体としては、直轄工事を安定的に受注している企業ほど賃上げを表明し、自治体発注工事を中心に受注している企業で賃上げ表明しない傾向にあった。維持修繕など競争性の低い工種ほど賃上げ表明率が低くなってもいた。
国交省の担当者は、業界の意見を聞きながら必要に応じて制度を改善し、さらなる表明率アップに取り組むとしている。建設業界からは「自治体の発注工事まで賃上げ加点措置の対象を広げないでほしい」といった声も出ている。
提供:建通新聞社