元下間の適正な請負契約や施工体制の確保について、特に「現場レベル」での意識付けが進んでいない現状が分かった。国土交通省が元下取引の実態を把握するため、下請け選定に携わる現場所長ら現場の実務者にモニタリング調査したところ、指し値契約が疑われる「大幅な一括値引き」が約1割、法定福利費の割合が著しく低い事例も2割程度見られた。こうした現場でも、本社では適正な見積もりの実施を宣言している場合もあったという。国交省の担当者は、「本社と現場でかい離がある。現場レベルでの意識の浸透が必要」だとした。
調査結果を見ると、約1割の契約で、端数処理とは思えない大幅な一括値引きがあった。合理的根拠がない一方的な値引きで、「いわゆる指し値受注に近い状況」だという。建設業法が定める不当に低い請負代金の禁止に違反する恐れもある。
法定福利費を内訳明示するための標準見積書については、8〜9割の元請けで下請けに活用を働き掛けていなかった。実際に、2割の契約で法定福利費が明示されておらず、残る8割は法定福利費が明示されていたものの、その約半数で算出根拠が不明確だった。
社会保険加入の下請け指導ガイドラインでは、元請けが下請けに対して標準見積書を活用するよう働き掛けるとともに、提出された見積書を尊重して下請け契約を締結するよう求めている。標準見積書を使用すれば法定福利費の算出根拠が明確になるといったメリットもある。
この他、2020年度に中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」については3割の現場所長が「知らない」「聞いたことはあるが内容は分からない」と答えた。施工体制台帳などの真正性の確認は約1割の現場で行われていなかった。
モニタリング調査では、見積もりや契約、工期の設定状況を、現場所長らにヒアリングした。国交省が21年度の建設業取引適正化推進期間(10〜12月)の重点的な取り組みとして実施。完成工事高上位の建設業者で、21年度に施工した民間工事または公共工事の現場所長ら実務者にヒアリングした。
調査では、合わせて受発注者間の状況も聞いた。工期設定について約3割の現場で「発注者が協議に応じてくれない」と答えた。約1割の現場では、価格変動に伴う契約変更条項が規定されていなかった。
提供:建通新聞社