農林水産省は、ため池や水路といった農業水利施設の機能保全に関する手引きを改定し、新技術の活用を明記する。ドローンやロボットなどを使った施設点検、設備の状態監視技術の適用など、機能保全の効率化に有用な新技術を導入する方向を盛り込む。10月21日に開いた食料・農業・農村政策審議会の委員会に手引きの改定案を示した。
手引きは、農業水利施設を機能保全で長寿命化するための基本的な考え方を示すもの。豪雨の増加や施設の老朽化の進展といった課題に対応するため、改定することにした。
新技術の導入に当たっては、国営施設などで適用性を検証し、課題を整理することが必要だと記載。技術図書などにその結果を反映し、広く共有して新技術を標準化していく。
また、機能診断や施設監視で得られた施設情報は、民間事業者を含めて公開し、新技術の開発や、有効な管理手法の水平展開につなげる。
農業水利施設を巡っては、愛知県の明治用水頭首工のように、突発的な事故で機能が損なわれる事態も発生。手引きの改定案では、機能停止による農業や周辺施設への影響を評価した上で整備水準を定める必要があるとした。
また、新たに水利用機能の診断を、ストックマネジメントのサイクルに位置付ける。施設管理者への聞き取りや現地調査により水利用機能を確認し、構造・水理面での劣化状態を診断。必要に応じて機能保全の方向性を整理し、事業化につなげる。
土地改良施設管理基準「ダム編」も改定する。豪雨の増加に対応するため、事前放流などの機動的な操作方法を追記。ダムの落差を利用した小水力発電など、再生可能エネルギーの利用の推進も記載する。
2023年2月をめどに農業農村振興部会が答申し、その結果を踏まえて改定する。
提供:建通新聞社