2024年度からの時間外労働の罰則付き上限規制をにらみ、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員企業の21年度の労働時間調査で三六協定の特別条項を適用してみたところ、非管理職の従業員のうち28・6%が上限時間を超過していることが分かった。規制適用まで1年半となる中、クリアすべきハードルの高さが浮き彫りになった。職種別の超過者の割合は、建築技術職が23・7%と最も高く、土木技術職が21・4%で次いだ。建築と比べ土木では4週8閉所の現場が多いものの、上限超過者の割合には大きな差がないことも明らかになった。
上限規制の対象となる原則的な法定時間外労働は1カ月45時間までで、年間360時間以内。ただし、特例として、労使による三六協定の特別条項で@法定時間外労働が年720時間以内A時間外労働と休日労働の合計が、どの2〜6カ月平均をとっても1カ月当たり80時間以内B時間外労働と休日労働の合計が1カ月100時間未満C時間外労働が月45時間を越えるのは年6カ月まで―の四つの条件を全て満たせば、規制の達成が認められる。
日建連では、時間外労働の自主規制目標を17年9月に設定、19年度から会員の時間外労働などの状況を調査している。21年度は初めて、上限規制の特例となる四つの条件を全て調査に適用した。
その結果、四つの条件を全てクリアした非管理職は71・4%で、28・6%が上限規制を超過していた。職種別の超過者は建築技術職23・7%、土木技術職21・4%、建築設計職17・0%、その他6・6%、事務職5・6%だった。
上限超過の要因に関して日建連では、四つの条件のうち特に「時間外労働が月45時間を越えるのは年6カ月まで」のクリアが課題だとみている。
月45時間・年360時間以内の上限規制の原則で見ると、非管理職の規制超過者は60・7%に上っている。
調査は会員企業141社を対象に実施。75・9%の107社が回答した。対象労働者数は13万6647人だった。
年間の平均時間外労働は、非管理職が364時間で、前年度より10時間減った。一方、管理監督者は320時間で、8時間増えた。総労働時間は、非管理職は前年度より16時間少ない2185時間、管理監督者は13時間多い2183時間だった。時間外労働の規制が適用される非管理職の労働時間が減少する一方、適用されない管理監督者の労働時間が増加する傾向が見られた。
また、上限規制で認められない年間720時間超の時間外労働を行っている割合は、非管理職では10%で、前年度より3ポイント減った。管理監督者は1ポイント減って7%だった。
日建連では、時間外労働の自主規制目標を21年度は960時間以内、22年度は840時間以内、23年度は720時間以内としている。当初、23年度は22年度と同じ840時間だったが、今年3月、1年前倒しで法の水準を目標にした。
今回の調査結果での上限超過状況について宮本会長は9月21日の会見で、「上限規制の適用開始まで1年半しかない中、現状は非常に厳しい」との認識を示した。そして、生産性の向上や、適正な工期設定への取り組みなど、対応を強化していく方針を述べた。
[取組強化を会員に通知]
日本建設業連合会は9月21日、21年度の労働時間調査を踏まえ、「24年度に(時間外労働の上限規制の)未達成者をゼロにすることは必須の課題」だとして、時間外労働の削減に向けた取り組み強化を求める文書を、労働委員会委員長名で会員企業に送付した。
提供:建通新聞社