2022〜31年度を対象とした政府の「PPP/PFI推進アクションプラン」が決まった。目玉の一つは、公民館や公園など身近な施設にも民間活力を導入できるモデルを形成し、特に小規模な自治体での挑戦を後押しすることだ。さらに、施設運営権の設定(コンセッション)をスタジアム・アリーナや交通ターミナルなど新たな領域にも拡大。一連の取り組みにより、10年間で合計30兆円規模の事業を生み出すとの目標を掲げた。
プランでは、22年度からの5年間を「重点実行期間」に設定。企業版ふるさと納税や各補助金・交付金を拡充し、集中して投入する。
政府は特に、自治体へのPFI活用の後押しに力を入れる。20年度末時点では、人口10万人以上の市区町村に限ってもPFIを「実施済み」は半分程度。都道府県・政令市でも11県・1政令市で実績がなく、取り組みには偏りがある。
そこで、10万人以上の全自治体を対象に、公共施設の整備の際には、まずPPP/PFI手法の適否を調べる「優先的検討規定」を23年度末までに導入するよう促す。
プランには、自治体への専門家派遣を従来の3倍に増やすことも盛り込んだ。26年度末までに全ての都道府県で企業と金融機関、自治体がPPP/PFI導入に向けて連携する「地域プラットフォーム」も立ち上げる。
小規模な公共施設の整備案件しかない自治体では、民間事業者が参入しても収益化が難しい。そこで、地域社会に資する収益事業を付帯させる先導的なモデル事業の創出にも取り組む。これまで対象とならなかった公園、公民館のような案件も含め、多様なPPP/PFIの展開につなげる。
内閣府の前副大臣でPFIを担当した小林史明衆院議員は公民館を例に挙げ、夜間利用やネット予約にも対応できていない現状は「現代のニーズに合っていないのでは」と指摘する。一方で、全国に約1万5000カ所もあり、有効利用できれば地域住民の利便向上へのインパクトは大きい。民間の資金やノウハウを生かして通信環境の整備やデジタル化などの最新の対応ができれば「地域の学び、交流の場という本来の役割を一層、果たせるようになる」と説く。公共が抱える財産を有効に活用する上で、民間のアイデアが生きる余地は大きい。
もちろん、空港や下水道といった大規模インフラでのコンセッション導入も引き続き重要なテーマとなる。プランでは、新たに開拓する領域のうちスタジアム・アリーナ関連で、千葉マリンスタジアムや秋田県新体育館など約20カ所の候補案件を盛り込んだ。今秋には導入のガイドラインを作成する。
さらに、文化・社会教育施設では北九州ソレイユホールなど約10カ所が候補となる。契約書のひな形を作成し、導入を検討している自治体を支援する。
道路法改正によりコンセッションが適用可能となった交通ターミナル事業では、▽品川▽神戸▽新潟▽四日市▽呉▽追浜―で具体化を推進。高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや下関北九州道路でもPFIを活用できる可能性を探る。
スタジアムなどの大規模施設から市区町村レベルの交流施設まで、PPP/PFIの活用の場は着実に広がっていく。地域に根差す建設業にとっては、活躍の場をさらに増すチャンスにもなりそうだ。
提供:建通新聞社