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2022/07/11

盛土崩壊を防ぐ 規制逃れ、早期発見

 静岡県熱海市の土石流災害を受けて制定された静岡県の盛土条例が7月1日に施行された。新条例では、面積1000平方b以上または1000立方b以上の盛土に許可を求める他、宅造法や森林法が適用されない盛土にも構造基準が設けられた。規制強化に合わせ、不適正な盛土への監視体制も強化された。副知事として熱海市の復旧や条例制定の陣頭指揮をとり、現在は県理事として盛土対策に当たる難波喬司氏に新条例の狙いを聞いた。
 ―災害発生から1年を待たず、盛土条例が施行されました。
 「まず、熱海市の災害の原因になった土砂は正確には盛土ではなく、単に土を谷から落として成形しただけのもの。宅造法や森林法で規制されていた盛土が安全に設計・施工されてきた一方、今回のように土砂を処分するための盛土は、処分費を抑えるために不適正な対応が繰り返されてきた。こうした盛土を規制することがこの条例の狙いだ」
 ―規制が緩かった残土の規制を強化するということなのでしょうか。
 「結果的には一定規模を超える全ての盛土に許可を求めることになったが、新条例で求める構造基準は、宅造法や森林法の基準より厳しいものではない。適切に施工された盛土に過剰に安全性を求めるわけではないが、許可の手続き上の負担はどうしても重くなる」
 ―条例で許可の適用を除外した公共工事の受注者が対応すべきことはありますか。
 「施工する上では何も変わらない。ただ、条例では、土砂基準に適合しない土砂を使った盛土を禁止している。このため、公共工事でも、定期的に水質と土壌汚染状況を調査し、報告する必要は出てくる」
 ―不適正な盛土に対する監視体制も強化されます。
 「規制だけでは必ず抜け道ができるため、監視体制も合わせて強化し、『初動全力』の考え方で規制を逃れようとする動きを早期に発見する。通報窓口の『盛土110番』も活用して住民の監視も取り入れる。通報を受ければ、県の監視機動班が現地に赴く」
 ―盛土規制法も来年には施行されます。条例と法律はどのように棲み分けられるのでしょうか。
 「盛土規制法は、切迫度や危険性が高い限られた区域を指定し、違反した場合に厳しい罰則を科す。一方の条例は県全域の広範囲に運用され、監視も強化される。いわゆる2階建ての構造で、1階部分を条例、2階部分を法律でカバーする。法律の施行後は、県が条例と法律を一体で運用することになる」
 ―盛土を施工する建設業には、今回の規制をどのように受け止めてほしいですか。
 「ほとんどの建設業は適正に盛土を施工し、残土を処分している。ただ、発注者が処分地を指定する公共工事と異なり、これまで民間工事には不適正な処分を許す余地があった。重層下請け構造も責任をあいまいにしている。こうした部分を自ら是正することが、建設業の社会的責任ではないだろうか」

提供:建通新聞社