10年連続で引き上げられた公共工事設計労務単価が、技能者の賃金に十分には反映されていない現状が浮き彫りになった。産業別年収を集計している厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2018〜20年度の建設技能者の平均年収は、労務単価が上昇し続けているにもかかわらず、ほぼ横ばいで推移。「労務費がダンピング競争にさらされている状況にある」と国土交通省が中央建設業審議会で報告した。
厚労省の統計調査では、建設技能者の平均年収は、18年と19年が460万円、20年が467万円とほぼ横ばいで推移した。一方で国交省の試算によると、労務単価に所定外給与を加味した建設技能者の平均年収は、週休2日を取得したと仮定すると18年に474万円、19年に495万円、20年には518万円に達するという。これは全産業の平均年収(20年=522万円)に相当する=図参照。
つまり労務単価に相当する賃金(労務費)が技能者に適切に行き渡りさえすれば、週休2日の確保と他産業並みの平均年収を実現できることになる。
では、技能者の賃金に影響を及ぼすダンピング受注を抑止し、技能者の平均年収を全産業並みに押し上げるためには、どのような方策が考えられるのか。
14日に開かれた中央建設業審議会では、技能者に賃金を支払う下請けの価格交渉力を高めるため、不当に低い請負代金の具体的な基準や労務費の「見える化」「標準化」について報告された。
例えば、国が労務費の目安を示すことができれば、元請け・下請け間、民間発注者・元請け間の価格交渉で、過度な価格競争を抑制する効果が期待できるという。
労務費の「見える化」「標準化」について、全国建設業協会の奥村太加典会長は中建審の席上、「最低賃金を保証するという点で一定の効果がある」と評価する。一方で「(価格交渉が)最低賃金に張り付いてしまう恐れもぬぐい切れない。そこに張り付かない取り組みを考えておくことも重要ではないか」との考えも示した。
提供:建通新聞社