厚生労働省は12月13日に開いた労働政策審議会安全衛生分科会で、建設アスベスト訴訟を踏まえた安全衛生法の省令改正の方針を示した。最高裁判決を受け、危険有害作業の保護対象に一人親方ら個人事業者を追加。事業者(発注者、注文者)に対し、密閉設備や局所排気装置などの使用に関する配慮義務を新たに規定するとした。作業方法の順守、保護具の使用を周知する義務も課す。
建設アスベスト訴訟では、国が規制権限を行使しなかったために作業者に健康被害が生じたとして、最高裁が屋内建設作業者に対する国の責任を認定。
さらに判決では、安全衛生法の健康障害の防止、危険・有害作業の保護対象が労働者に限られていることを問題視し、労働者に当たらない一人親方も保護対象に相当するとして、国の権限不行使を違法とした。
厚労省は13日の会合で、最高裁判決を踏まえた省令改正の方針を提示。安全衛生法で定める事業者の保護措置の対象を、有害作業に従事する個人事業者、現場に出入りする全ての者(資材搬入業者など)に拡大する。
具体的な措置としては、有害物の発散抑制設備(密閉設備、局所排気装置など)、緊急時用設備、休憩室、作業衣の保管設備、洗浄設備などについては、個人事業者らにも設備を使用させる配慮義務を規定する。危険防止のための作業方法の順守、保護具の使用、作業終了時の汚染除去などについては、現場への掲示や書面交付、口頭などでの周知義務を定める。
汚染場所の立ち入り禁止や事故発生時の退避、入退室管理などについても、個人事業者を措置対象に追加する。
厚労省は、まず現行の安全衛生法の規定を前提として、これら省令の改正作業を進め、最高裁判決に速やかに対応する。法改正が必要な事項については、改めて検討の場を設ける考えでいる。
提供:建通新聞社