国土交通省は、災害復旧工事中の2次災害による損害について、受注者の負担を通常よりも低い「1%未満に軽減する」か「求めない」ようにする方向性を示した。公共工事標準請負契約約款上、公共工事では不可抗力による損害発生時、受注者が請負代金の1%を負担し、それを超える部分の損害額を発注者が負担することとしている。受注者の負担を軽減し、応急・災害復旧がより円滑に進むようにする。
建設工事では、不可抗力による損害を民法の原則通り受注者の全額負担とした場合、リスク分が請負代金に組み込まれ、結果として契約金額の増額を招き、発注者も重い負担を負いかねない。このため公共約款では民法の考え方を転換し、発注者の負担をあらかじめ明確化。発注者の負担は請負代金の100分の1(受注者負担分)を超える部分としている。
ただ、近年、豪雨などの自然災害が各地で相次いでおり、災害復旧に当たる建設業者が、例えば増水した河川での作業など、2次災害にさらされる危険性が高くなってきた。こうした現状を踏まえ国交省は、特に、応急・災害復旧工事について、不可抗力による損害の解釈を明確にする必要があると認識。公共約款上、災害復旧工事中の2次災害による損害は「発注者の責めに帰すべき事由」に該当しないものとする一方で、受注者負担の軽減の在り方を検討するとした。
今後、中央建設業審議会で約款の改正案を提示し、検討を進める。
昨年、長野県上田建設事務所が発注した依田川などの災害復旧工事では、工事中に豪雨による異常出水があり、工事目的物が被災。請負金額3億2237万円の1%となる322万円を受注者が負担することになった。
10月15日に開かれた中央建設業審議会では全国建設業協会の奥村太加典会長が「利益数パーセントでやっている地域建設業にとって、受注者が1%を負担する考え方は非常に厳しい。全額公費負担とするのが道理ではないか」との考えを述べた。
静岡県島田市の染谷市長は「災害復旧工事を受注しやすい環境を整えるため、2次災害の損害で受注者に負担を求めないことに賛成する」と表明した。
提供:建通新聞社