厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2020年度の建設業の現金給与総額(事業所規模5人以上)は、前年度比0・6%減の41万6024円となった。好調な建設投資の増加を背景に建設業の賃金は上昇傾向が続いていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を境に8年ぶりに減少に転じた。
20年度の現金給与総額は、全産業で1・5%減の31万8081円となり、業種別でも全16業種中13業種で前年度額を下回った。建設業も0・6%減と8年ぶりに減少したが、7・0%減の飲食サービス業をはじめ、コロナ禍の影響が大きかった業種に比べるとマイナス幅は小さい。
公共工事の積算に使用する公共工事設計労務単価にもコロナ禍の影響が出ている。昨年12月に行われた労務費調査の結果、都道府県・職種別の単価の42%が前年の単価を下回った。国土交通省は市場が新型コロナウイルス感染症の影響下にあるとして、マイナスになった全ての単価を前年と同額に据え置く特別措置を適用。
それでも、今年3月に適用された労務単価は、全国全職種平均で1・2%増(単純平均)にとどまり、単価の上昇が始まった13年以降で最も低い伸び率となった。
賃金が停滞から下落に向かえば、建設業が2000年代の負のスパイラル≠ノ再び陥る恐れがある。国交省と建設業4団体は今年3月、21年度の建設技能者の賃金上昇率を「おおむね2%以上」とする目標で一致。ダンピング受注の排除や技能者への適切な支払いなどを呼び掛けている。
提供:建通新聞社