厚生労働省は、建設アスベスト訴訟の最高裁判決を受け、一人親方を安全衛生法令の保護対象に位置付ける。労働者でない一人親方は、事業者が健康障害や危険・有害な作業から保護する義務がなく、規制が不十分だったことが最高裁での国の敗訴につながった。保護の対象、保護措置の内容、保護の責任を負う者を整理した上で、安全衛生法令を見直し、一人親方を現場で保護する対象として明確に位置付ける。
建設アスベスト訴訟では、国が規制権限を適切に行使しなかったために建設作業者に中皮腫などの健康被害が生じたとして、今年5月に最高裁が屋内建設作業者に対する国の責任を認定。厚労省は、訴訟上の和解金の支払い、未提訴の被害者に対する給付金の支給について、手続きを進めている。
訴訟では、一人親方に対する安全衛生対策も争点になった。安全衛生法では、健康障害の防止や危険・有害作業などの保護対象が労働者に限定されているが、最高裁判決ではこの解釈を否定。労働者に該当しない一人親方も保護対象に相当する、として国の権限不行使を違法と判断した。
こうした経緯を踏まえ、厚労省は10月11日、労働政策審議会の安全衛生分科会を開き、安全衛生法の規制を見直すための審議をスタート。今後、保護対象や保護措置の内容などを議論する。現在は雇用する事業者に課されている保護措置の責任者についても整理する。
最高裁判決ではこの他、防じんマスクの使用を呼び掛ける現場への警告表示や掲示が不十分だったとも指摘しており、石綿障害予防規則で石綿関係疾患の内容・症状、マスク着用の必要性などの表示を義務付ける。合わせて、石綿以外の発がん性物質(有機溶剤、鉛、粉じんなど)も表示義務の対象にする。
また、集じん機電動工具の使用を義務付けるため、製品の集じん性能に関する実態調査、調査研究を行う考えも示した。
提供:建通新聞社