全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)が、同協会の建設キャリアアップシステム(CCUS)モデル工事現場36現場を対象に2021年度のアンケート調査を行ったところ、CCUSにメリットがあるとする回答が42%を占め、前年年と比べ16ポイント増加した。また、下請企業の事業者・技能者登録率が前年よりアップするなど、国土交通省のCCUS活用推奨モデル工事での成績評価などが普及を後押しした。普及促進策では、工事成績評価をはじめ、総合評価、経営事項審査などでの加点を挙げる意見が目立った。
全建の21年度のCCUSモデル工事現場は、国の直轄工事15現場、地方公共団体発注工事18現場、民間発注工事3現場の計36現場。国交省のCCUS活用推奨モデル工事が4割強を占めている。CCUSの普及の課題やメリットを把握するため、8月末時点の状況について調査した。
現場での下請企業の事業者登録率は、国交省がCCUS活用推奨モデル工事の最低基準とする70%以上である割合が、前年度より19ポイントアップして43%になった。
また、登録技能者率は、国交省の最低基準60%以上をクリアする割合が、前年度より18ポイント高い52%になった。
いずれも、国交省のCCUS活用推奨モデル工事の効果が表れた。
下請企業に対する加入対策は、前年より12ポイント高い74%が「呼びかけ」を中心に行っていた。一部に未登録企業とは契約しないという回答があった。また、同じく74%が「呼びかけ」を中心に技能者のカードタッチを促進していた。タッチしない技能者の入場を認めないという回答も一部にあった。
CCUSのメリットについては42%が「ある」、58%が「ない」と答えた。
「ある」と回答した理由では▽作業員名簿や資格の有無をいつでもシステムから確認でき、帳票としても出力できる▽発注者へのアピールポイントとなり、工事成績評定で加点される▽書類の簡素化につながる―といった声が寄せられた。
一方、業務の効率化について、「図れる」は9%にとどまり、「図れない」が91%を占めた。
「図れる」理由は▽最新の帳簿が利用できる▽技能者の個人データ(資格・保険・緊急連絡先など)が瞬時に確認できる―など。「図れない」理由では、▽技能者全てがCCUSに加入していないため、従来の安全書類で確認している▽会社の決めた様式で統一している―といった声があった。
また、技能者登録が進まない理由については、「登録申請に経費と手間がかかる」「登録したメリットがない」「CCUSを活用している現場が限られ、利用機会が少ない」といった回答が多かった。
CCUSの普及促進有効策の回答では▽工事成績評価の加点▽申請の簡略化▽総合評価への加点▽CCUSに係る「技能者の賃金アップ分」の経費の積算への計上▽経営事項審査への加点▽カードリーダー設置費とタッチ費用の積算への計上▽カードのレベルに応じた賃金の経費の積算への計上―などが多かった。
提供:建通新聞社