国土交通省は、昨年の災害対応で待機中の建設会社の事務所や作業員が土砂崩れで被災したことを受け、災害協定の在り方などを見直す。2022年度に実態調査を実施し、地域の災害対応力強化に向けた必要な改善策を探る。
見直しに向けた検討は、21年度から始めており、これまでに地域の建設業団体への個別アンケートによる聞き取り調査などを実施している。調査結果を踏まえ、労災適用を確実にするための留意事項の整理・周知、補償をより充実・確保するための方策について、法定外労災保険の加入促進や災害協定の見直しを含めて検討していく。
22年度は災害協定の普及・活用状況、重機保有の実態などを調べるとともに、地域の災害対応力の強化に必要な改善策の検討を予定している。
昨年9月の台風では、宮崎県椎葉村の相生組の住居兼事務所が土石流に襲われ、復旧作業に備えていたベトナム人技能実習生らが巻き込まれ、亡くなった。
国交省は発生直後に、待機時の作業員らの安全確保を求める通知を建設業団体と自治体に送付し、ハザードマップで災害拠点の危険性を確認して作業員に周知することや、避難情報に注意して安全確保を最優先にすることを求めた。
さらに、被災を教訓に、災害復旧のために待機する建設業者が被災した場合、確実に労災適用を受けられるための留意事項などを整理することとした。
昨年の椎葉村の災害で厚生労働省は、災害復旧のための待機が労災の適用範囲に当たるとの解釈を示しており、災害発生前に自治体などが協定先の建設業者に待機を要請することを文書で指示しておくことで、被災した場合の労災適用に備えてもらう。建設業者側にも指示を受けた文書・メールなどの保存の徹底を求める。労災保険に加入できない会社役員らが被災するケースに対応するため、労災保険への特別加入も求めるとしていた。
地域の守り手という役割を担う地場の中小建設業者にとって、災害対応時に被災した場合に十分な補償が受けられる環境整備は必要不可欠なもの。国・自治体と建設業者が結ぶ災害協定を見直し、補償をより充実させる方策の検討が急がれる。
提供:建通新聞社