建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)は、技能労働者の処遇改善に向け、技能労働者のレベルごとの最低賃金と現場ごとの標準単価を合わせて設定し、2021年度末に公表する方針を固めた。最低賃金と標準単価は会員団体(全34団体)がそれぞれで設定する。技能者の処遇の見通しを示すことで将来の担い手確保につなげる。また標準単価が民間工事で活用されるようになれば、技能労働者に支払う賃金をより適切に担保できるといった経営者側のメリットもあるとしている。8月26日の臨時理事会で了承した。
最低賃金は、資格と経験年数を条件に技能労働者が1年間で最低もらえる賃金(年収)をレベルごとに設定する。その最低賃金を基に、生産性などを加味しながら現場ごとの標準単価(労務費)を算出する。標準単価に安全管理費や現場経費などは含めない。
最低賃金と標準単価を合わせて設定することについて岩田会長は、「職人のキャリアパスを賃金的に示すことは大切だが、その原資を確保しなければならない中小企業の経営が安定していないことが問題」と指摘。その上で、「標準単価が広く認められるようになれば、下請け業者は職人への賃金支払いの原資を適切に担保できるようになり、不当に労務費を削られるようなダンピング行為を防ぐことにもなる」と考える。
こうした取り組みを急ぐ背景には、若者の入職を促すための技能労働者の処遇改善を進める一方で、ダンピング受注が散見される建設業界の現状がある。岩田会長によると現在、四国地方でダンピングが発生しており、相場の半値近くでの指し値受注も見受けられるという。
さらに、技能労働者が携わっている現場の大半が民間工事であり、そこでダンピングが発生していることにも言及。「処遇改善を本気で進めるのであれば、民民の契約にどのように業界団体として、また監督行政として関わっていくかという目線を持たないと、本当の改善にはつながらない」とも話す。
最低賃金と標準単価については今後、建専連の企画委員会での調整を経て各会員団体で設定を進め、22年3月末に公表する。その後、国土交通省、ゼネコン、業界団体、民間発注者などに標準単価への理解と活用を求めていくことになる。
建設業法は「不当に低い代金」での請負契約を禁じている。現状は「不当に低い代金」がいくらなのか明確な基準はなく、重層構造にあって取引上優位な立場にある元請けから低価格受注を強いられ続けている下請けは多い。こうした現状に終止符を打つために、標準単価を「不当に低い代金」を線引きする基準とすることが、ダンピングを防ぐ有効な手だてになるともしている。
提供:建通新聞社