国土交通省は8月26日、一般会計の公共事業関係費として前年度比18・8%増の国費6兆2492億円を求める2022年度当初予算の概算要求を発表した。事前防災対策の重要性を考慮し、さらなる国土強靱(きょうじん)化、流域治水の本格展開を見据える他、新たな成長推進枠として2050年カーボンニュートラルなど国土交通グリーンチャレンジの実現、インフラDXの推進、地域の活性化関係の予算を盛り込んだ。21年度から25年度までの5年間に政府全体で15兆円程度の事業規模を見込む「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の22年度予算は、金額を示さない事項要求として、年末までの予算編成時に財務省と折衝する。
事項要求では、5か年加速化対策の他、熱海市の土砂災害を踏まえた盛り土災害防止に向けた総点検の対応、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた地域公共交通・観光の確保・維持などの必要な経費についても予算編成過程で検討する。
5か年加速化対策は、政府全体の123対策のうち国交省で53対策を重点的に取り組んでおり、21年度の事業規模は全体で4・2兆円の事業規模となっている。
22年度予算の概算要求では、▽国民の安全・安心の確保▽社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大▽豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり―の三つの重点項目を設定し要求内容を固めた。
通常分の概算要求では、気候変動の影響で激甚化・頻発化する水災害に対し、あらゆる関係者により流域全体で治水対策を講じる「流域治水」に5401億円を要求。洪水氾濫を防ぐ計画的な堤防整備、河道掘削、ダム建設・再生、雨水貯留浸透施設整備などのハード整備に加え、災害ハザードエリアなどの移転促進といったソフト対策も推進する。
インフラの老朽化対策には8350億円を要求し、予防保全への本格的な転換、新技術の活用、インフラの集約・再編などを推進する。地方の老朽化対策や防災・減災を支援する防災・安全交付金にも1兆0290億円を要求する。
2050年カーボンニュートラルなどグリーン社会の実現に向けては、2300億円を求め、ZEH・ZEBの普及や木材活用、長期優良住宅整備の支援、住宅・建築物の省エネ対策の強化、既存ストックの省エネ改修、港湾や空港施設の脱炭素化などに取り組む。
国土交通分野のDX推進には、デジタル庁一括計上分を含む360億円を要求した。社会資本整備・維持管理のデジタル化・スマート化に向け、BIM/CIMの活用拡大、5Gを活用した無人化施工などを進める。事業者からの申請手続きのオンライン化にも取り組む。
デジタル庁は9月1日の設置を予定。国交省が所管する政府情報システムの予算について、デジタル庁で280億円を一括計上した上で、国交省に予算を付け替え執行する。一括計上されるシステムは、行政情報ネットワークシステム、次世代河川情報システム、特殊車両通行許可システム、地震活動総合監視システムなど。
この他、東日本大震災復興特別会計には、前年度比5・5%減となる380億円を要求している。
提供:建通新聞社