土木学会(家田仁会長)は9日、「豪雨激甚化と水害の実情を踏まえた流域治水の具体的推進に向けた土木学会声明」を発表した。激甚化する豪雨への対応に後れを取っているという事実を認識し、土木技術者が洪水被害を軽減するため流域治水に関わる全てのステークホルダーと連携して土木技術の活用を図るよう求めた。一方で、流域の水害リスクや治水の課題に関する情報の共有が不可欠だとして、「多段階リスク明示型浸水想定図」の作成・活用を推進するとともに、これに必要な土木技術の開発・実装を急ぐ考えを示した。
流域治水の目指すべき方向性については、超過洪水から「逃げること」だけでなく、できる限り「生命も財産も」守ることが必要と指摘し、気候変動の影響を踏まえた河川整備基本方針の見直しを主張した。
他方、洪水のハザード情報と地域の曝露量・脆弱性の情報を統合した「多段階リスク明示型浸水想定図」は、河川管理者と市町村が協働して整備すべきものと強調。その整備には河川工学だけでなく、土地利用や交通状況など土木工学の総合的知見が必要になるとして、河川管理者、流域市町村、地域の土木技術者や学識者・関係学協会が連携して、技術開発、整備、普及を図るべきとした。
また、洪水ハザードに暴露量、脆弱性を総合した洪水リスク情報を中小河川流域で作成することは技術的、財政的に困難だとして、地方公共団体への適切な技術的、財政的支援を国に求めた。
さらに、「多段階リスク明示型浸水想定図」を活用した流域治水の過程では、多くの関係者の利害調整を図る必要が生じると指摘。この課題に対応するため、地域に根差した土木技術者が知識・経験を活用し、「公平な仲介者」として貢献していくための活動を支援していく考えも示した。
土木学会は2020年1月、「令和元年東日本風災害」を受けて、流域治水への転換を唱えた『防災・減災に関する提言』を発表。国土交通省の社会資本整備審議会は同年7月、流域治水への転換を唱えた答申『気候変動を踏まえた水災害対策のあり方について』を発表していた。
提供:建通新聞社