地方公共団体でのピュア型CM(コンストラクション・マネジメント)方式の建築事業に関わる活用実績が、小規模な自治体で約3〜4割を占めていることが国土交通省の実態調査で分かった。同方式の利点ともいえる自治体で不足する技術職員を補完する役割が発揮され始めたようだ。地域別では東京都や大阪府などの都市部で多く、関東と近畿で全体の約7割を占めた。担当課は都市部以外の地方にも広げていくことが今後の課題とした。
実態調査にみる建築事業での活用実績は全264件。地域別では関東が最も多く全体の44%を占めた。近畿は22%。
人口規模別では10万〜50万人の中核市が全体の37%で最多となったが、10万人未満の自治体での活用実績は約4割、建築職員数10人以下の自治体で約3割を占めた(図参照)。
全体的には品確法改正(2014年度)以降、ピュア型CM方式の導入実績は大きく増加。17年度以降は事業費30億円未満の比較的小規模な事業での活用も増えてきた。
実施段階は、約8割のケースが事業の上流段階からCM方式を活用。特に基本計画段階から活用するケースは約5割を占めた。業務期間別では複数年業務が約6割あった。
施設用途は学校、庁舎、病院の3用途が全体の約7割。発注者の構成は市区町村、政令市、その他の公的機関(学校法人、病院機構など)で大半を占めた。
一方、土木事業での活用実績は全126件。福島、宮城、岩手の3県での活用実績が多く、東北だけで全体の約8割を占めた。事業区分別にみると災害復旧事業で全体の約6割を占めているが、災害復旧での活用は16年度をピークに減少傾向となっている。近年は新設・維持、その他(造成、港湾、公園、基地など)での活用が増えつつあるようだ。
建築と同様、事業の上流段階からCM方式を活用するケースが多く、全体の約6割を占めた。また、全体の9割の案件で工事施工段階を含んでいた。
技術職員が不足する自治体に対して国交省は20年9月に、地方自治体がピュア型CM方式を活用するためのガイドラインを策定。自治体が同方式で発注体制を補完できるよう、CMR(コンストラクション・マネジャー)の選定方法や発注者との役割分担、CM業務を委託する際の契約約款などを整理していた。
実態調査は、20年12月に「公共事業におけるピュア型CM方式活用実態調査」としてアンケート方式で実施した。過去に受注したピュア型CM業務を対象に、建築事業は日本CM協会、土木事業は建設コンサルタンツ協会の会員にアンケートした。有効回答数は390件(36社)。内訳は建築事業が264件(15社)、土木事業が126件(21社)だった。
提供:建通新聞社