日本芸術文化振興会は国立劇場のPFI再整備に関わる技術アドバイザリー業務を香山建築研究所(文京区)に委託する。2024年10月からの公募型プロポーザル手続きを通じて同社を特定した。民間収益施設の合築を必須条件にPFI事業者を選ぶ入札の2度にわたる不成立などを踏まえ、新劇場に絞ったモデルプランの作成や要求水準書の修正などを任せる。一方、並行して進めていた民間収益施設の条件修正などに伴うアドバイザリー業務の簡易公募型プロポーザル手続きを取りやめた。仕様を見直して再発注する考え。25年度に改めて実施方針の概略を公表した後、26年度に正式な実施方針の公表や特定事業の選定を経て、PFI事業者を選ぶ3度目の入札を公告する見通し。27年度の事業契約を予定している。
国立劇場(千代田区隼町)の再整備は、既存施設の抜本的な老朽化対策や伝統芸能の伝承・創造機能の強化などを図るために実施する。PFI手法を導入し、既存施設の解体や、延べ床面積5万6500平方bの新劇場とホテルなどの民間収益施設を合築した複合施設の設計・建設、新劇場の維持管理・運営などを民間に任せる予定だった。
ただ、22年4月に公告した最初の入札は全ての応募者が辞退。国の22年度第2次補正予算に基づく500億円の事業費措置を経て23年2月に公告した2度目の入札も、応募者の入札価格が予定価格を超過して落札者の決定に至らなかった。
このため振興会の有識者会議や関係省庁などのプロジェクトチームが対応を検討。24年12月に整備計画を一部改定し、2度の入札で必須条件だった民間収益施設を自由提案にしたり、地下駐車場などを除く劇場部分の面積をおおむね4万8000平方bにしたりすることを決めた。また、国の24年度補正予算で再整備費用の物価高騰相当分として200億円が措置された。
これらを踏まえ、振興会は今回の技術アドバイザリー業務を通じて新劇場に絞ったモデルプランを作成し、2度目までの入札に関する要求水準書と関係資料を修正。その上で、既存施設の解体を含む施設整備の工期や概算工事費を検討する。履行期間は24・25年度の2カ年となっており、香山建築研究所との契約を急ぐ。26年3月31日を期限に完了させる。
一方、民間収益施設の条件修正などに伴うアドバイザリー業務は▽事業費の算定と支払い方法の修正▽民間収益施設の実施条件の修正(自由提案とする場合の条件整理)▽PFIライフサイクルコストとVFM(従来方式と比べたコスト削減割合)の算定▽実施方針の概略に関する説明会の支援▽市場調査の実施などに関する支援―を24・25年度で行う内容だった。委託先には維持管理・運営を巡る事業者選定基準の再検討(26年度)や、基本協定と事業契約の締結についての支援(27年度)も任せることにしていた。
簡易公募型プロポーザル手続きの取りやめは、整備計画の一部改定を受け、民間収益施設の自由提案に関連して事業者が参入しやすく収益力を向上できるようにするための具体的な検討が必要になったことが理由。仕様の見直しを進めて早期の再発注につなげる。
なお、過去のアドバイザリー業務は香山建築研究所と山下PMC(中央区)のJVやPwCアドバイザリー(千代田区)が手掛けていた。
提供:建通新聞社