東京都建設局は練馬城址公園の未開園区域に関する基本設計を早ければ2025年度にスタートさせる。石神井川の右岸に広がる面積8f強が対象で、草地広場や修景施設などを整備する方針だ。29年度の開園を目指す。
練馬城址公園は練馬区春日町1丁目、向山3丁目各地内の面積約26・66fを計画区域として1957年に都市計画決定した。中央を石神井川が流れており、一部には室町時代に築かれた練馬城跡がある。計画区域の85%を占める約22fは藤田好三郎が26年に整備・開設した「練馬城址豊島園」を起源とする「としまえん」の園地だった。
都は東日本大震災を受けて2011年12月に改定した「都市計画公園・緑地の整備方針」で、練馬城址公園を首都東京の防災機能を強化するために優先的に事業を進める公園に選定。としまえんの土地を所有する西武鉄道などと20年6月に覚書を取り交わし、都が都立公園を段階的に整備することや、民間事業者が一部にスタジオツアー施設を造って30年間運営した後に都立公園とすることなどを決めた。としまえんは20年8月に閉園した。
21年5月に整備計画を策定して▽花のふれあいゾーン(石神井川左岸)▽エントランス交流ゾーン(石神井川右岸)▽川辺の散策ゾーン(石神井川沿い)▽人々をつなげ歴史を伝える文化ゾーン(石神井川右岸)▽にぎわいアクティビティゾーン(石神井川左岸)―の5ゾーンを設定。スタジオツアー施設の建設に充てる「にぎわいアクティビティゾーン」を除いた13・42fの事業認可を21年6月に得て、うち約11・4fの土地を西武鉄道から順次購入しながら整備を進めている。
整備に向けて22〜23年度にまず約7・2fを購入。うち「花のふれあいゾーン」と「エントランス交流ゾーン」「川辺の散策ゾーン」の一部に当たる約3・2fを整備して23年5月に開園した。残る約4・2fも24年度以降に購入する予定。民間による「にぎわいアクティビティゾーン」のスタジオツアー施設は23年6月にオープンした。
一方、未開園区域の大半は「人々をつなげ歴史を伝える文化ゾーン」が占める。起伏に富む地形や自然を生かしつつ、練馬城やとしまえんが積み重ねてきた文化やにぎわいの歴史を伝える憩いの空間とするとのコンセプトの下、草地広場や水遊び場、花畑と噴水を配した修景施設などの整備を考えている。
25年度にも基本設計を始めるのは、未開園区域のうち西武鉄道から購入済みまたは購入予定の約8・2fが対象。業務委託を通じてコンセプトを踏まえた整備内容を固めた上で実施設計や工事を進め、29年度の開園を目指す。
事業認可区域の他のエリアの整備は29年度以降を予定。事業期間は33年度まで。また、計画区域の一部を削除・追加する都市計画変更を6月17日に告示し、計画面積はおよそ1・9f減の約24・8fになった。
〜古城の塔 撤去・保存の方針〜
練馬城址公園の未開園区域には「古城の塔」と呼ばれる建築物が練馬城址豊島園の開園当初から立っている。規模は鉄筋コンクリート造平屋558平方b。耐震性が不足しているものの、関東大震災直後の完成で地域の歴史に根付いた建築物であることから取り扱いを検討していた。
具体的には▽立ち入り可能な建築物として利活用=耐震化・改修費約4・6億円▽立ち入り不可の建築物として保存=改修費約2・6億円▽建築物を撤去し、記録として保存=撤去費約0・5億円―の3案を比較。その結果、撤去して記録を保存する方針を7月に固めた。
現段階では、建築物の一部の部材を保存したり、建築物のデータをデジタル化したりして記憶を継承する方向。今後、検討業務を委託して保存方法などを固める考え。
提供:建通新聞社