東京都建設局は神田川など10流域の河川整備計画を改定し、目標整備水準の引き上げに伴う調節池の新設や既存する調節池の拡張を盛り込む。気候変動により降雨量が増加するとの予測を踏まえた対応。今後、各流域で将来の流量をシミュレーションし、必要となる施設規模を調べて計画の改定に生かす。浸水被害の予想が大きい流域から検討に着手する方針だ。
現行の河川整備計画では、区部で時間最大75_、多摩部で同65_の降雨に対応するため、おおむね30年間程度で実施する整備の内容を明示。河道の拡幅・掘削の他、流域の市街化で拡幅などが難しい場合は、調節池などの貯留施設や分水路を整備するとしている。
計画に基づき施設を整備してきたものの、気候変動の影響により降雨量が1・1倍に増加するとの予測を踏まえ、都は23年12月に「気候変動を踏まえた河川施設のあり方」を策定。目標整備水準を区部で時間最大83_、多摩部で同72_に引き上げた。
同時に「豪雨対策基本方針」を改定。対策の目標雨量を10_引き上げて区部で時間85_、多摩部で75_に設定し、河川や下水道の整備などに取り組むこととした。
これまでの浸水被害の状況や、現在と将来の浸水時に想定される被害の深刻度から、▽神田川▽石神井川▽白子川▽柳瀬川▽谷沢川・丸子川▽野川▽目黒川▽呑川▽渋谷川・古川▽境川―の10流域を「対策強化流域」と位置付けている。
さらに「TOKYO強靭(きょうじん)化プロジェクト」をアップグレードし、30年度までに約200万立方bの新たな調節池の事業化に着手する方針を打ち出した。
このため建設局は目標整備水準の引き上げなどを考慮しながら、個々の対策強化流域で将来の流量がどの程度増えるかをシミュレーション。その結果を基に、浸水対策が必要な区間で調節池の新設や既存する調整池の拡張などを検討し、河川整備計画を改定して盛り込む考え。
検討に際しては、浸水被害の予想が大きい流域を優先する。また、以前の目標整備水準に基づき検討してきた調節池についても、検討の進捗に応じて今後の進め方を判断する。
河川整備を巡っては、6月4日の都議会本会議で發地易隆氏(自民党)が代表質問。これまで整備した護岸や調節池が「大きな効果を発揮している」と評価しつつも、激甚化・頻発化する豪雨から都民の安全安心を確保するため、「ハード・ソフト両面の実効性の高い対策をさらに推進するべき」と訴えた。
これに対し、花井徹夫建設局長は答弁の中で「神田川など10流域で将来の気候変動に対応する調節池の整備を検討し、河川整備計画を順次改定していく」と今後の展開を説明した。
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建設局では▽環状七号線地下広域調節池(中野区〜練馬区)▽和田堀公園調節池(杉並区)▽下高井戸調節池(杉並区)▽野川大沢調節池(三鷹市)▽境川木曽東調節池(町田市)▽境川金森調節池(町田市)▽城北中央公園調節池1期(板橋区・練馬区)▽下谷橋調節池(東久留米市)▽谷沢川分水路(世田谷区)―の9施設を施工中(22年4月現在)。
24年度は城北中央公園調節池の2期工事に関する一般競争入札(業種=一般土木、工事発注規模価格帯600億円以上650億円未満)を10月中旬に公告する予定だ。また、石神井川上流地下調節池(西東京市〜武蔵野市)の工事発注に向けて、当初予算に限度額769億5000万円の債務負担行為(25〜31年度)を設定している。
提供:建通新聞社