東京都建設局によるICT活用工事の実施件数が2023年度に100件程度に上ることが分かった。28件だった22年度のおよそ3倍。対象工種のうち舗装修繕工が大幅に増えていることが全体を押し上げているという。
ICT活用工事は、▽3次元起工測量▽3次元設計データ作成▽ICT建設建機による施工▽3次元出来形管理等の施工管理▽3次元データの納品―の五つの施工段階でICT施工技術を活用するもの。17年度に土工を対象工種としてスタートさせた後、国土交通省の取り組みを参考に対象工種を順次拡大。24年度は基礎工と擁壁工を新たに加えて合計9工種に増やした。25年度以降は国交省が取り組んでいる橋脚・橋台と橋梁上部工も対象工種に加える予定だ。
受注者希望型と発注者指定型の2類型があり、入札公告時に明示。このうち発注者指定型は、土工(数量7000立方b以上かつ予定価格1億6000万円以上)と舗装工(路盤工1万平方b以上)でICT建設建機による施工が可能な案件を選んでいる。
五つの施工段階の全てでICT施工技術を活用した場合に工事成績評定に2点、複数で活用した場合なら1点を加点する。
実施件数の状況を見ると、17〜18年度が各5件、19〜21年度が最大15件と増加傾向で推移。22年度は28件と21年度の14件から倍増した。22年度の実施件数の3分の1に当たる10件は、22年度に対象工種に追加した舗装修繕工だった。
23年度の実施件数は12月時点で68件に到達。対象工種のうち舗装修繕工が22年度に比べ39件増の49件と全体の約7割を占めていた。この他の対象工種は土工が11件(1件増)、舗装工が2件(1件増)、河川浚渫工が6件(増減なし)となっている。
また、舗装修繕工での実施会社数は21社で、うち6社は複数工事で実施。22年度は実施会社数が3社、複数工事での実施が2社だったことから、1社が複数工事でICT施工技術を活用するケースが増えているようだ。
建設局は23年度に工事受注者や建設関連団体の会員企業を対象としたアンケート調査を行って、ICT活用工事のメリットや課題を把握。メリットに▽作業時間の短縮▽人員削減▽安全性の向上―を挙げる声が多かった一方で、「採算がとれる工事が少ない」「人材確保が難しい」などの理由から、積極的な導入にはつながらないとの意見があった。また、受注実績のない会社は「知識がない」「従来の施工方法で支障がない」などと回答した。
このため建設局は今後、活用事例の公表や講習会・研修を通じてICT活用工事のメリットなどを建設会社に紹介することで、実施件数の増加につなげたい考え。
提供:建通新聞社